PR

 2008年6月19~21日に東京・有明の東京ビッグサイトで,「ケーブルテレビショー2008」が開催された。25回目となる今年のテーマは,「ケーブルテレビがつなぐあなたと未来」。本稿では,ショーの会場を訪れて気付いたケーブルテレビ(CATV)業界の課題をまとめてみた。


 アナログ放送が終了する2011年7月24日まで,残された時間は3年あまりとなってきた。この時期に開催された今年のケーブルショーの展示内容からは,家庭のテレビをデジタル放送に対応させることに業界を挙げて取り組むというCATV業界の意気込みがうかがえた。ショーの期間中である6月20日に,日本民間放送連盟が地上デジタル放送に関する普及状況を発表した。これを見ると,世帯普及率は依然として過半数に達していない。対応受信機があるにもかかわらず対応アンテナを接続していない世帯が,調査対象世帯の10%近くを占めるという事実に,改めてエンドユーザーへの支援の必要性を痛感する。

経済弱者対策をにらんだ廉価版STBの展示も

ブロードネットマックス(BN-MUX)のブースでは,コミュニティーチャンネルのHDTV画質によるデジタル化ソリューションを積極的に展示していた
写真1●ブロードネットマックス(BN-MUX)のブースでは,コミュニティーチャンネルのHDTV画質によるデジタル化ソリューションを積極的に展示していた
[画像のクリックで拡大表示]

 今年のケーブルショーでは,最終日の6月21日を一般視聴者向けのイベントの日と位置付け,ソフト(番組)ブースを中心にタレントを動員するなどしてCATVの魅力を訴求した。ハード(機器)ブースでは,廉価型のSTB(セットトップボックス)の新製品を展示するメーカーが数多くあった。「地上デジタル放送用の廉価版チューナーを,生活保護世帯に1台だけ無料配布する」という総務省の経済弱者対策をにらみ,これまでCATVになかなか加入できなかった世帯で地上デジタル放送だけを格安で視聴できるようにするために,CATV事業者が用意する受信機のバリエーションを増やすものだ。

 CATV事業者には,自社で運営するコミュニティーチャンネルのデジタル化という課題もある(写真1)。HDTV(ハイビジョン)映像素材の制作にはコストがかかるため,MSO(CATV統括運営会社)といえども素材のHDTV化は進んでいない。メーカーの展示では,SDTV(標準画質テレビ)品質だがシステム構成費用が安く済むコミュニティーチャンネルのデジタルソリューションもみられた。アナログで複数のコミュニティーチャンネルを運営しているCATV事業者といえども,デジタルの「NIT」(Network Information Table:地上デジタル放送をどのような周波数配列で流すかを決める信号の情報群)が一つしか与えられていない現状であれば,6MHzの帯域をフルに使った複数のSDTV放送(まだら放送)の編成も考慮せねばならないだろう。

 またB-CASの運用経費や受信機側のシステム構成などの問題で,当面はCASを使わずにコミュニティーチャンネルを運用する事業者が少なくないという関係者の解説があった。しかし6月23日にデジタル放送推進協会(Dpa)が,「ダビング10」の運用を7月4日早朝に開始すると発表した。そのためCASの運用が急がれそうだ。CASを使わないと,権利者からの番組素材の提供がままらない。まずはCATV事業者の制作力向上のために,行政のさらなる支援や業界努力の必要性を感じる。