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 以前,中堅ITベンダーに中途入社し,セキュリティ分野のSEとして勤務していた田邊氏(仮名)は,当時を振り返ると腹立たしい思いにかられる。

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 田邊氏がデスクワークをしていたある日,一本の電話がかかってきた。以前,田邊氏がファイアウォールを導入した顧客企業のシステム担当者からだった。内容はファイアウォールの設定に関するもの。「セキュリティの設定方法が分からないので,調べてくれるかな」。田邊氏は快諾し,電話を切った。

 早速,田邊氏は,自社で製品の技術サポートを担当している技術部のA氏に問い合わせてみた。すると,「よく知らないし,ファイアウォールのマニュアルが英語だから読んでないんだよね。自分でメーカーに問い合わせてよ」という耳を疑う回答が返ってきた。

 田邊氏は,「技術部は,製品の技術検証や製品に対する顧客からの問い合わせに対応するのが仕事ではないのか?」とA氏を問い詰めた。だがA氏は,「君は最近入社したばかりだから知らないのは無理ないが,表向きとは役割が違って,技術部は基本的に機器調達が担当なんだ。うちで言うサポートは,電源を入れて製品が動くかどうかをチェックする程度だ。製品を売った後のことなんて考えていないよ」とつっぱねた。

 このような押し問答が続いたため,やむを得ず田邊氏は,回答に若干時間がかかることを顧客に伝えた上で,ファイアウォールの英文マニュアルを読み込み,分からない点については米国の製造元に問い合わせた。そうして得た情報を基に,顧客を訪問してファイアウォールの設定を変更した。

 その後も,田邊氏があっけに取られる出来事が続いた。数カ月後,思うところあって田邊氏は会社に辞表を提出した。

 新たな脅威が次々に出現するセキュリティ分野で仕事をしているのに,顧客からの設定方法の問い合わせに応じず,「サポートは電源を入れて製品が動くかどうかをチェックする程度」「製品を売った後のことは考えていない」と言い放つのだからあきれ返る。

 このケースでは,A氏の怠慢ぶりだけが目立っているが,このITベンダーの現場の雰囲気をよく表していると言えないだろうか。セキュリティ対策は日々変化するので,ユーザー企業にとって,ITベンダーによる技術サポートは大きな意味を持つ。これもセキュリティ分野に限った話ではないが,ITベンダーのサポート力を見極めることが欠かせない。