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 NHKは2008年7月6日,インターネットの動画配信サービス「Joost」に外国人を対象とした英語による番組の提供を開始した。番組提供の第一弾は30分のニュース番組で,北海道・洞爺湖で開催された主要国首脳会議(G8)のもようを開催期間中1日に4~5回,内容を更新して配信した。今後,日本のポップカルチャーを紹介する番組や音楽番組など4番組を,約半年間にわたり提供する計画である。

 今回の番組提供は,2009年からNHKが強化する国際放送のための実験という位置付けである。NHKの国際放送には,外国人向けの「NHKワールドTV」と,在留邦人向けの「NHKワールド・プレミアム」がある。NHKワールドTVは,3機の通信衛星を使いほぼ全世界に向けて提供されている。ただし,視聴には直径2.5~6mのパラボラアンテナと専用のチューナーが必要となりのユーザーには敷居が高い。実際にどれくらいの世帯で視聴されているかは,NHKも把握できていないという。インターネットの普及にともない,視聴者からは手軽に見られるインターネット配信を求める声が増えており,今回の実験は「伝送路の一つとして,インターネット配信でどれくらいの利用者を獲得できるかを調べるのが目的」(笹原達也・NHK国際放送局企画編成部副部長)と説明する。

 Joostは,インターネット電話サービス「Skype」の開発者が立ち上げたP2P(Peer to Peer)技術を使う動画配信サービスで,欧米を中心に約700万人が利用している。「YouTube」と比べて知名度の低いJoostをNHKが実験の場として選んだ主な理由は,(1)利用者が無料で視聴できる,(2)配信されているコンテンツはすべて権利処理されている,(3)視聴動向に関するデータが提供される──といった三つの条件をJoostが満たしていたためだ。ワールドTVが無料放送なので,実験とはいえ課金モデルでは提供できない。「NHKの番組が違法コンテンツと同じ画面に並んで表示されるのを避ける」(笹原副部長)必要である。Joostの配信コンテンツは全て権利処理が済んでいるため,こうした心配がない。視聴動向の把握が今回実験の主な目的で,どの地域で何人が何分視聴したというデータがNHKに提供されることになっている。

 今回の実験はあくまで期間を限定したものであり,終了後にJoostをどう活用するかは未定である。ただし,2008年3月にNHKが発表した国際放送向けの番組制作を委託する新会社設立に関する報道資料には,「テレビ国際放送を,最新のネット技術を活用して世界各地にインターネット配信することを検討」という文言が盛り込まれている。また「これまで取材相手が完成した番組を見たくても見られないことが多かった。インターネット配信で番組が見やすくなれば,国際放送の知名度が上がり取材しやすくなる」(笹原副部長)と,インターネット配信による副次的な効果に対する現場の期待も大きいという。