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 不動産管理のリロケーション・ジャパンは2008年1月、新サービス「空家巡回サービス(仮称)」を始める。海外赴任や長期旅行などで留守にする家を定期的に訪問し、部屋の空気を入れ替えたり、家屋や周囲の状況をデジタル・カメラで撮影。これらの結果をWebサイトを通じて顧客に報告する。

サービスとシステムの企画・開発チーム
サービスとシステムの企画・開発チーム
プロジェクト・リーダーは、リロケーション管理ユニットの宇都宮直子氏(中央)。Salesforceの設定は営業ユニットの森田めぐみ氏(左から2番目)が担当。現場主導のシステム企画・開発は中谷憲一郎執行役員(左から3番目)が推進した

 このサービスを立ち上げたのは、入社6年目の女性社員を中心とする若手グループだ。不動産管理や営業といった通常業務のかたわら、約半年をかけてビジネス・プランを練ってきた。顧客や巡回業務の内容を管理したり、Webサイト上で報告書を公開するシステムも自ら作り上げた(写真1)。

写真1●リロケーション・ジャパンが2008年1月に開始する「空家巡回サービス」
写真1●リロケーション・ジャパンが2008年1月に開始する「空家巡回サービス」
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 システム基盤としてセールスフォース・ドットコムのCRM(顧客関係管理)サービス「Salesforce」を採用しているものの、データベースで管理する項目を設定したり、報告書をPDF化して公開する処理を定義したりする作業は、6人の企画メンバーが行った。システム部門や社外のITベンダーの手は一切借りていない。

 「ビジネスを一番理解している現場が主体的にシステムの企画や導入にかかわれば、(システム部に依存し過ぎていた)今までよりも、もっと早く、もっと安く、効果的にシステムを活用できるようになる」。中谷憲一郎執行役員は、現場主導型のシステム企画・導入のメリットを強調する。

「Salesforce」を現場に開放

 「何ができるのか、どうすればできるのかが分かれば、どんどんアイデアを形にできる。自分たちの手だけで試行錯誤を繰り返せるため、テンポ良く新サービスを企画できる」と、プロジェクトを率いたリロケーション管理ユニットの宇都宮直子氏は言う。

 このようにユーザー部門が自由にシステムを導入できるのは、システム部門が「Salesforce」の利用を全面的に認めているからだ(図1)。導入目的や管理するデータ項目などを事前にシステム部門に報告すれば、自由にデータベースを作ったり、Salesforce上に機能を追加したりできる。

図1●リロケーション・ジャパンは社外のCRMサービス(Salesforce)の導入権限をユーザー部門に委譲した
図1●リロケーション・ジャパンは社外のCRMサービス(Salesforce)の導入権限をユーザー部門に委譲した
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 システム部門が権限の一部を現場に委譲したきっかけは、2005年当時、社宅管理部門の部長を務めていた中谷氏が、独自判断でSalesforceを導入したことだった。「システム部門やITベンダーと議論している時間がもったいなかった。システム部門から怒られることを覚悟して、見切り発車で導入した」(同)。

 ところが、事態は思わぬ方向に進んだ。現場の社員がSalesforceの新しい活用方法を提案したり、他部門への導入を促し始めたのだ。「禁止して現場のやる気を削ぐよりも、ルールを決めて活用を促したほうが得策」と経営陣も判断し、会社として正式に現場主導のシステム導入を認めることにした。

 システム部門にとって、現場主導のシステム導入に対する不安は大きい。データベースやアプリケーションが社内外に散在し、管理不能になるからだ。システムを作った人材の退職や他部門への異動によって、システムを保守できなくなる懸念もある。一方、開発ツールやデータの格納場所を限定すれば、こうした懸念はぐんと減る。

 現在、同社では空家巡回サービスのほかにも3つのプロジェクトが進行中だ。いずれも現場の有志が集まり、業務改善や新サービスで活用するためのシステムを企画・導入している。

 「情報システムは、もはやシステム部門やITベンダーだけの特別な存在ではなくなった。現場の知恵を生かすには、もっとITを現場に開放すべきだ」と、中谷執行役員は現場主導型のシステム導入を強く推す。