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 今年10月、JR貨物は輸送ルートを全面的に見直した。従来は総延長約8300kmある貨物路線を、行き先やルートごとに約40万パターンに分類していたが、これを約9万パターンに削減することで、輸送力を落とさずに効率的に貨物列車を運行できるようにした。路線の統廃合により輸送力に余力を持たせることで、加速し続けるトラックから環境負荷の小さい鉄道へのモーダルシフトに対応できるようにした。この業務改革案を提案したのは、システム面から現場を支援する「IT改革推進室」だ(図1)。

図1●JR貨物は輸送業務など現場を経験した人材を集めたIT改革推進室を設置<br />IT改革推進室の本部は貨物専用の隅田川駅(東京都荒川区)にある。写真は花岡俊樹室長
図1●JR貨物は輸送業務など現場を経験した人材を集めたIT改革推進室を設置
IT改革推進室の本部は貨物専用の隅田川駅(東京都荒川区)にある。写真は花岡俊樹室長
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 IT改革推進室は情報システム部門とは別に、物流業務やシステム部門の経験者を寄せ集め、ITで現場を支援する専門組織として設けられた。設立は 2000年と古いが、もともとは、2005年に稼働したGPS(全地球測位システム)とICタグを使って貨物輸送業務を合理化するシステム「IT- FRENS&TRACE」を構築するために設置された。ところが、システムが本稼働して1年が過ぎたころから現場支援の組織へと役割が変わってきた。IT改革推進室に、貨物業務を改善する情報が集まるようになったからだ。

24時間稼働の部内コールセンター

 トゥルルルル…。IT改革推進室の電話は、昼夜問わず鳴り響く。「緊急の積み荷を何とかできないか」といった貨物業務の相談や、「○○システムに××の機能を入れてほしい」といったシステムへの注文など、その内容はさまざまだ。輸送ルートの見直しといった改善案を、IT改革推進室が各事業部門に提案することもある。

 花岡俊樹室長が特に重視していることは、ユーザー部門とのコミュニケーションだ。ヘルプデスクのために設けた部内コールセンターは、今や現場の「駆け込み寺」としてなくてはならない存在。そのために、3交代制で24時間対応できるようした。07年4月からは、1泊2日の「IT改革室体験研修」も始めた。コールセンターでの対応やデータ解析作業など、同部門の業務を体験することで、「あそこに相談すれば、何か答えが見つかるはず」といった考えを草の根的に広めるためだ。従来のシステム部門は、列車運行システムや基幹系システムの運用・保守が中心だったため、「どこに相談すべきか、現場も困っていたようだ」(同)。

 “御用聞き”だけでなく、提案できる部門になることにも力を入れている。そのため同部門では、システムのログを解析する専任チームも設置した。貨物の流れのムダ・ムラ・ムリを発見しては、現場に改善策を提案する。今年10月に貨物路線のパターンを削減したのも、データ解析による提案がきっかけだ。「余計なことに口を出すなと言われたこともある。だが、口を出すことからコミュニケーションが生まれ、現場の知恵がどんどん集約できるようになる」と花岡室長は言う。