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 ベビー用品の製造・販売で快進撃を続ける西松屋チェーン。12期連続で増収増益を達成中で、07年2月期には売上高が1000億円を超えた。売上高は遠く及ばないものの、経常利益率は10.9%と業界大手のファーストリテイリング(12.3%)やしまむら(8.6%)と遜色ない。「自慢できるような情報システムがあるわけではない。作業時間を1分でも短くする方策を社員みんなで考えては、試行錯誤を繰り返してきただけ」と、仲本豊取締役は話す。

1日1分の合理化で365万円を節約

 約600店舗を展開する同社にとって、作業時間を1店舗当たり1日わずか1分短縮するだけでも、人件費だけで365万円(時給1000円換算)を節約できる。実際、今年9月まで3年がかりで実施した商品陳列作業の合理化策では、イントラネットを通じて陳列方法の電子マニュアルを配信したり、商品棚別に配送するよう物流システムを変更した結果、1店舗当たり年間330時間分の業務を合理化した。全店合計では約20万時間、金額に換算すると約2億円分の利益を生み出したことに相当する。

 こうした地道な改善活動を支えているのは、システム部員や店舗運営を支援するエリア・マネージャ、商品企画・開発担当者など総勢15人を集めた「店舗業務改善プロジェクト・チーム」だ(図1)。毎月1回、兵庫県姫路市の本社に集合し、1分でも業務を合理化するための方策を考える。

図1●西松屋チェーンは部門横断型の業務改革チームを編成し、システム活用策の検討・実験を繰り返している
図1●西松屋チェーンは部門横断型の業務改革チームを編成し、システム活用策の検討・実験を繰り返している
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 プロジェクト・チームは、自身の担当業務の枠を超えて、改善策を提案する。「レジの位置を変える」といった小さな改善もあれば、「電子マニュアルの配信システムを作る」といったシステム化にかかわることまで、検討する内容はさまざまだ。「業務の仕組みを変えることが目的であって、情報システムを作ることが目的ではない」と、仲本取締役は強調する。

 提案のあった改善策はすぐさま、いくつかの実験店舗で実施する。その効果の計測結果を持ち寄り、翌月の会議で「他店舗に水平展開するかどうか」「その際の課題は何か。どう解決するか」を議論する。「まだまだ改善できることは、山のようにある。現場の知恵を集め、愚直に続けていくことが大切だ」と仲本取締役は強調する。

 この10月からは、レジ業務の合理化に着手した。「POSレジの平均稼働時間は、営業時間の約5割。黙ってお客さんを待っているだけではもったいない」(同)からだ。実態を把握するために、システム部門はPOSレジの稼働実績を基にレジ担当者の空き時間を集計する仕組みを構築。曜日別に開店から閉店まで1時間きざみで、レジ担当者の空き時間を計測できるようにした。

 この結果は各店舗にイントラネットを通じて配信。パート従業員のシフト表を組む店長は、空き時間の多い時間帯のレジ担当者に商品整列や店舗清掃といった業務を割り当てられるようにした。初年度はまず平日に1時間を捻出できるようにし、全店合計で約16万時間(金額換算で1億6000万円)分の業務を削減する見通しだ。

全54店舗の現場の声を聞き回る

 神奈川トヨタ自動車も、システム部門が部門横断型のプロジェクト・チームを作って、業務改善を続けている。その成果の1つが、08年1月から本稼働する契約書類作成支援システムだ。

 新車契約の際に必要となる書類は多岐にわたる。車庫証明といった一般的なものに加え、例えば登録車両と下取り車両の名義人が異なったりすると、必要書類は一気に増える。過不足なく用意するのは、ベテラン社員でもなかなか難しい。そこで新システムでは、商談のパターンに沿って項目を入力することで、必要書類がすべて自動的に整うようにした(図2)。

図2●神奈川トヨタの契約書類作成支援システム。以前は膨大な定型用紙の中から、必要なものを逐一選び出していた
図2●神奈川トヨタの契約書類作成支援システム。以前は膨大な定型用紙の中から、必要なものを逐一選び出していた
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 システム化に当たっては、営業部門と本社の企画部、そして情報システム部門の合計10人でプロジェクトを組んだ。リーダーを務めた情報システム室の中島智広係長がこだわったのは「現場の声の徹底した聞き取り」だ。実際、メンバーで手分けして全54店舗の営業部門を訪ねて回った。

 「住所や氏名など、顧客が何枚もの書類に同じことを書かずに済むようにしたい」「印鑑証明の使用目的を説明する資料を用意して顧客に渡したい」といった、顧客サービスの視点での要望が多く寄せられ、これらはすべてシステムに反映させた。「実際に業務に携わる人でなければ、顧客本位の発想はなかなか出てこない。単なる事務効率化に終わらなかったのは、現場の最前線の声を真剣に聞いて回ったからこそ」(中島係長)と振り返る。