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 「そもそもシステム部門がないんです」。日本デルモンテの三津兼一郎総務部長は、苦笑いしながら打ち明ける。同社は売上高273億円、従業員は約300 人の中堅企業。「総務部がシステム部門を兼務しているが、基本的には自部門のシステム活用は自分で考え、導入するようにしている」(同)。

 同社は基幹系システムとしてSAPジャパンのERPパッケージ「R/3 Enterprise」を導入しているが、使用しているのは会計処理のみ。周辺業務である勤怠管理や各種申請処理などのシステムは、Excelを用いて自作した。開発ツールとして活用しているのは、Excelのマクロ作成・管理ツールである「StiLL」と、ビーコンインフォメーションテクノロジーのワークフロー・エンジン「Xuras Workflow」だ。

 自作システムの利点は、コスト削減や開発期間の短縮だけではない。「本当に使いたいシステムを導入できる点」と三津部長は言う。例えば、昨年3月に総務部と工場部門が共同で開発した勤怠管理システムは、入力インタフェースをオフィスではExcel、工場ではペン型入力装置「アノトペン」と分けている(写真1)。

写真1●日本デルモンテは勤怠管理システムを総務部門が開発<br />使い勝手を良くするために工場ではペン型入力装置(アノトペン)を採用した
写真1●日本デルモンテは勤怠管理システムを総務部門が開発
使い勝手を良くするために工場ではペン型入力装置(アノトペン)を採用した
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 同社では作業工数を詳細に分析するため、各部門の仕事を10分類し、1時間ごとに作業内容を記録する。当初は工場にもパソコンを導入したが、活用が進まなかった。わざわざ事務所に戻って入力する手間が、現場に敬遠されたからだ。OCR(光学式読み取り)装置を使った入力方法も試してみたが、濡れた手で入力用紙に触れることがあるためスキャナーが故障。そしてたどり着いたのが、紙上の位置情報を無線でパソコンに送信するアノトペンだった。専用の入力シートは、大日本印刷と共同で開発した。

 「“使いにくい”とわがままを言うだけでは、何も変わらない。だからこそ、システムを活用するには、どのように開発すべきかを、本気で現場が考える風土になった」と語る。

業務分析やRFPは現場の仕事

 マンション管理を手掛ける三井不動産住宅サービスも、システム部門に頼り過ぎない風土がある1社だ。システムの運用・保守部門はあるが、あくまでも現場の助言役に過ぎない。

 今年10月末に稼働したマンション管理支援システム「FMナビゲーションシステム」は、開発作業こそ社外のITベンダーに委託したものの、業務分析やベンダーに提出するRFP(提案依頼書)の作成などは、現場主導で行った。マンションを管理するフロント・マネージャ(FM)やコールセンターの担当者、本社のスタッフ部員など15人から成るプロジェクト・チームが、約1年をかけて作業を進めた。

 新システムの狙いは、サービス・レベルの向上だ。ベテラン社員のノウハウや、日常業務に潜んでいる“うっかりミス”を減らす仕組みをシステムに組み込んだ。例えば、FMの業務内容を優先順に表示したり、期日が迫るに従って色が変わるようにした。経験が浅いFMのために、業務名にマウスのカーソルを合わせると解説文を表示する機能も備えた。

 システムの機能要件を決めるには、「日々の業務のなかでの“気づき”を集め続けることが不可欠。突然、『要件を出してください』と言われても、すぐにアイデアは出てこない。だからこそ、現場が中心となってプロジェクトを進める必要がある」と、リーダーを務めた経営企画課の鈴木敏也主査は強調する。