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Q 人間ドックを初めて受けました。今まで会社で受けていた健康診断でもそうでしたが,今回も特別な異常はありませんでした。ただし,C型肝炎ウイルス抗体が陽性と言われ,とても心配です。どうすればいいでしょう。 (40歳,男,プロジェクト・マネジャー)

 肝臓病の一種である「C型肝炎(HC)」を引き起こす「C型肝炎ウイルス(HCV)」は,1989年に初めて存在が確認されたウイルスです。感染すると,体内に「HCV抗体」ができます。このウイルスへの感染は決してめずらしいことではありません。実際,日本では100万~200万人もの感染者がいると言われています。

 C型肝炎ウイルスに感染しても,感染者の30%程度は自然治癒する(ウイルスがいなくなる)とされています。自然治癒した場合は,HCV抗体が検出されても(陽性でも),ウイルス自体は体内にはいません。しかし,自然治癒していない場合は,体内にウイルスが残っているので,肝障害が進行する可能性があります。

 このため,質問者のようにHCV抗体が陽性の場合,必ず大学病院や総合病院の内科などで肝臓病を専門としている医師の診断を受ける必要があります。そこでは,「HCV-RNA測定」という検査方法によって,体内にウイルスが残っているかどうかを確認します。これは,血液中にあるC型肝炎ウイルスのリボ核酸(RNA)を増幅して検出し,ウイルスが体内にどの程度いるのかを調べる検査です。

 HCV-RNAが検出されなければ(陰性であれば),ウイルスは体内に残っていない可能性が高いと考えられます。GPTなどの肝機能の数値も正常であれば,腹部超音波検査で肝臓の形態に問題がないことを確認し,後は年1回の肝機能検査で肝機能の数値が基準値内であることを確認すればよいことになります。

 一方,HCV-RNAが検出された場合(陽性の場合)は,ウイルスが体内にいるわけですから,まず腹部超音波検査で肝臓の形態を精密に検査し,問題がなければ年1回,なんらかの問題があれば年2回,肝機能検査と腹部超音波検査を定期的に実施することになります。

 定期検査でGPTの値に異常があれば,インターフェロンやリバビリンなどの薬物治療を考慮しなければなりません。明確な基準はありませんが,肝臓を守るには,GPTが70を超えていないことが必要とされています。

 GPTの異常は,肝細胞がたくさん壊れていることを示しています。治療せずにそのまま放置すると,肝細胞の「線維化」が進み,「肝硬変」になります。肝硬変は,治療が困難な重い病気です。食道の壁の静脈が破れるなど命にかかわる症状を引き起こすほか,肝硬変が認められる肝臓からは「肝臓がん」も多発します。

 C型肝炎ウイルスは血液を介して感染します。これまでは輸血で感染することが多かったのですが,現在は事前にチェックされているので,この恐れはほとんど無くなりました。血液製剤についても同様です。以前は予防接種の際の針の使い回しによる感染も多かったのですが,今は針の使い回しは行われていません。性的接触による感染の可能性も,C型肝炎ウイルスの場合は極めて低いとされています。このように,現在では新たな感染の危険はほとんどなくなっています。質問者の場合は,子供の頃に注射針の使い回しで感染した可能性が考えられます。

河野 慶三
富士ゼロックス全社産業医
1970年,名古屋大学医学部卒。厚生省,熊本県公害部首席医療審議員,労働省主任中央じん肺診査医,産業医科大学助教授,自治医科大学助教授を経て,94年に富士ゼロックス本社産業医に就任。98年から全社産業医。著書に「働く人の健康管理」(労働新聞社)など。医学博士