PR

ERPパッケージの市場は,独SAPと米Oracleの2強による寡占状態が続いている。しかし,彼らの足下をよく見ると,一味違う世界が広がっていることが分かる。現在のERP市場では業種固有機能の提供が最も重要な成功要因だが,この点において2強以外の第2勢力も差異化のために様々なアプローチをしており,奏功している。

Forrester Research, Inc.
ポールD・ハマーマン バイス・プレジデント兼プリンシパル・アナリスト

 ERPパッケージの市場は、独SAPと米Oracleという2人の巨人によって、ハイエンド市場で成熟した状態が続いている()。しかし彼らの足下を、多国籍企業の視点で見ると違う世界が広がっていることがわかる。

図●年間総収入トップ13のERPベンダー
図●年間総収入トップ13のERPベンダー
[画像のクリックで拡大表示]

 現在ERPの市場において、産業特有の機能を提供することが成功の最も重要な要素となった。このトレンドは、近年Oracleをアプリケーション企業の買収に駆り立てたり、SAPが中堅中小のビジネスを今後の成長に向けて当てにし始める一因となっている。

 巨人は市場の半分以上をコントロールしているものの、他の第2勢力のERPベンダーは差異化のために様々なアプローチをしており、奏功している。例えば、オランダAgresso、米Epicor Software、米Infor Global Solutions、米Lawson Software、米Microsoft、英The Sage Groupといったベンダーである。現在約380億ドルであるERPアプリケーションの市場は年率6.9%の割合で成長しており、2012年までに500 億ドルまで成長するだろう。

 第2勢力のベンダーにもより特化した地域と領域で多くの好機があることは、主要なプレーヤーの戦略を比較することでよくわかる()。

表●ERPベンダーのバーチカル戦略
[画像のクリックで拡大表示]
表●ERPベンダーのバーチカル戦略

 SAPとオラクルの特定市場に向けたバーチカル戦略はかなり進んでおり、そのセグメントは多かれ少なかれ排他的だ。例えばSAPは石油とガス、化学の業界を席巻する一方でオラクルは公益と通信に強い。ただし小売りや政府、銀行セグメントにおいてはベンダーが激しいバトルを繰り広げている。

 第2勢力のベンダーは、ヘルスケアやプロフェッショナルサービスなど巨人があまり強くないバーチカル市場により深く食い込んでいくことで競争を進める。より特定の地域の小さな市場にサービスを提供したり、ユーザーが利用しやすいようにアプリケーションを刷新するなどで実現している。

広がる産業特化の市場

 フォレスターはERPと切り離した、産業バーチカルなアプリケーションの市場にも注目している。この市場は2008年に360億ドルに達するとみており、ERPの市場とほぼ同じ規模となる。最も大きなカテゴリはヘルスケアの120億ドルでその次が金融サービスの83億ドルである。小売りは38億ドル、公益・教育で15億ドル、その他の産業アプリケーションで103億ドルとなっている。これらのアプリケーションを提供するベンダーは言及するには多すぎるが、いくつかを紹介したい。

 まずは2億5700万ドルのソフトウエアベンダーである米Blackbaud。非営利団体の市場で断トツのシェアを持っている。芸術や文化、宗教的奉仕活動、教育や基金、健康関連のサービス、共同体組織などがビジネス領域。製品は財務、資金集め、構成関係者の管理といった機能を提供している。

 カナダをベースとするCGI Groupは、米国の連邦、州、地方政府で強い競争力を保っている。同社は40億ドル規模のグローバルなコンサルタント会社で、2004年にアメリカンマネジメントシステムを買収することでこの分野での力を付けた。特に抵当権や資金会計といった分野での専門性を高めている。この分野のほかのキープレイヤーとしては、地方自治体に強い米Tyler Technologiesが挙げられる。

 病院分野の専門としては米Cerner、米Eclipsys、米Epic Systems、米Medical Information Technologyがある。患者看護と収入ストリーム管理のコアとなるプロセスはこれらの専門ベンダーの排他的な領域となっている。オーストラリアの Mincomは資産管理に特化し、運輸、政府、公益など様々な産業を深掘りしている。