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 プロジェクトの完了とは,計画通りにシステム(成果物)を完成させることではない。本当の意味でのプロジェクトの完了は,「顧客に検収してもらう」ことである。きちんと検収してもらうには,あらかじめ終了条件を明確にして公式な文書で記録しておくことが重要である。

 プロジェクトには必ず納期があるので,完了日が明確に定義される。しかし,納入日が来れば自動的に完了するプロジェクトは存在しない。意思を持って完了させる手続きが必要である。

 現実には,プロジェクトを予定通りに完了させることは,簡単ではない。受注プロジェクトでは予定通りにシステムを納入しても,顧客先の運用テストが終了し,問題がないことが確認された時点で検収される場合が多い。この顧客運用テストでシステムに問題が発生し,多くの月日とコストを費やしたプロジェクトを,筆者はPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)の立場で数多く見てきた。

 システムに問題が無く,仕様書通りに作られたシステムであっても,エンドユーザーが運用テストを開始した途端,仕様変更が多発することもある。システムに不具合も無く,仕様変更も発生しない場合であっても,顧客内部の運用体制が整っていなかったために顧客への引継ぎができず,多くの月日とコストを費やしたプロジェクトも見た。

 このようなことがあるから,プロジェクトを予定通りに完了させることは,非常に難しいのである。では,プロジェクトを予定通り完了させるためには何が必要なのか。それは,プロジェクト・マネージャ(PM)やメンバーがプロジェクトの完了について真剣に考え適切な行動を行なうことである。

完了条件をはっきりさせる

 プロジェクトを予定通りに完了させるためには,まずプロジェクトがどのような状態であれば,またどのような条件を達成すれば完了できるのかを明確にしなければならない。大規模プロジェクトや技術的に難しいプロジェクトであれば,なおさら完了条件を明確にしておくことが重要だ。

 PMやメンバーにとっては,顧客から検収を頂くことはプロジェクトの完了につながる。しかし,顧客にとってはシステムの引き取りを意味するものであり,むしろ始まりなのである。プロジェクトの完了とは,システム(成果物)の不具合を無くしたところではない。あらかじめ顧客と合意した完了条件を満たし,システム(成果物)を顧客に引き継いだところで,プロジェクトは完了する。

完了条件を公式文書にする

 プロジェクトの完了条件が明確になったら,次はこれをプロジェクト・チャーターや契約書などの公式文書に記載する。顧客先から完了条件が指定される場合もあるが,それが不十分であれば明確にする必要がある。それらを必ず公式な文書にしておくことが重要だ。特に口頭約束は,誤解や思い込みが発生したり,忘れてしまったりする場合があるので危険である。公式文書で明記することにより,顧客とPM,プロジェクト関係者が共通認識を持つことができるのである。

 文書化は,内容を真剣に吟味・検討することにつながる。文書にすることはプロジェクト・マネジメントの基本であり,省略してはいけない。むしろPMは率先して文書化に取組むべきである。

 また,PMはプロジェクトのメンバーや関係者に対して,どのような状態になればプロジェクトが完了できるのか,そのためには何を実施しなければいけないのかを説明し,完了のイメージを共有化してプロジェクトを推進することが大切である。

完了条件を確認する

 プロジェクトを完了させるために,PMはプロジェクトの完了条件の確認を慎重に行なう必要がある。完了条件の内容確認は,次のような公式文書で確認する。

・契約書
・プロジェクト・チャーター
・プロジェクト計画書
・客先との議事録
・関係書類

 基本的には,プロジェクト計画書に重要な顧客との約束事項は反映されているはずなので,その記載内容とプロジェクト進行中での取り決め事項の確認になる。さらに,見落としを防ぐために,PMはプロジェクトに関係する上記の公式文書をすべて確認しておく必要がある。

千種 実(ちくさ みのる)
日立システムアンドサービス
プロジェクト推進部 部長
1985年,日立中部ソフトウェア(現 日立システムアンドサービス)に入社。入社以来,一貫してプロジェクト管理に従事。PMOの立場でトラブル・プロジェクト支援を数多く経験した後,社内のプロジェクト管理制度の構築やプロジェクト管理システム(PMS)開発およびプロジェクト支援,プロジェクト・マネージャ教育講師に携わる。また,他社のプロジェクト管理に関するコンサルティングや研修講師,講演などを経験し,現在もPMOの立場からITプロジェクトを成功へ導くために幅広く,社内外で活動中。1962年,三重県出身。岡山理科大学理学部応用物理学科卒。