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自然界には存在しない電磁気的性質を作り出す「メタマテリアル技術」を,アンテナに応用した無線LAN製品が登場した。ネットギアジャパンが7月に発売したIEEE 802.11n搭載ブロードバンド・ルーターがそれである。メタマテリアル技術は,従来では難しかったMIMOの多アンテナ化と無線機器の小型化を実現する。

 「メタマテリアル」とは,マテリアル(材料)に,「超越した」という意味の「メタ」という接頭語を付けた造語。自然界に存在する通常の材料が持たない電磁気的性質を,人工的に持たせた材料を指す。

 メタマテリアル技術はここ数年注目を集め研究論文の数が急増していたが,ついに製品に使われた。米ネットギアが「メタマテリアル・アンテナ」を使い,アンテナ数を通常の3本から8本に増やしたIEEE 802.11nのアクセス・ポイント(AP)を開発した(写真1)。

写真1●メタマテリアル技術で11nのアクセス・ポイントに8本のアンテナを搭載<br>写真中の数字はアンテナを示している。左側にある米ネットギアの従来製品では3本のアンテナを搭載している。従来はこれ以上のアンテナを搭載することが難しかった。右側にある今回の製品は,メタマテリアル技術を応用することで,8本ものアンテナを搭載できた。なお,8本目のアンテナは基板の裏側にある。
写真1●メタマテリアル技術で11nのアクセス・ポイントに8本のアンテナを搭載
写真中の数字はアンテナを示している。左側にある米ネットギアの従来製品では3本のアンテナを搭載している。従来はこれ以上のアンテナを搭載することが難しかった。右側にある今回の製品は,メタマテリアル技術を応用することで,8本ものアンテナを搭載できた。なお,8本目のアンテナは基板の裏側にある。
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 一般的な11nのAPは,3本のアンテナのうち電波状態が良い2本を選択し,MIMO(multiple-input multiple-output)による通信に使う。ネットギアの製品では,8本の中から状況の良い2本を選ぶことで電波状態をさらに改善し,スループットと通信距離を向上させた。実測では同じスループットなら通信距離が10~15%伸びたという。

 アンテナの本数を大幅に増やせるのは,メタマテリアル技術で電波の指向性を変えられるから。誘電率などの特性を自由に制御することで,干渉を避けられる(図1)。

図1●干渉を避けてアンテナの間隔を狭くする
図1●干渉を避けてアンテナの間隔を狭くする
メタマテリアル技術によって電波の出力を干渉を避ける方向にそらすことができる。これによりアンテナ間の距離を縮め,MIMO機器で多数のアンテナを搭載したり,装置自体を小型化したりできるようになった。

 ネットギアの製品では搭載アンテナ数を増やすために同技術を利用したが,アンテナ間の距離を縮めることに応用すれば機器本体を小型化できる。さらに誘電率や透磁率といった電磁気的性質を自由に制御することで,波長に対するアンテナの特性を補償し,アンテナを大幅に短くできる。

 ネットギアの製品に使われている技術の基礎は,米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で開発された。UCLAから供与されたライセンスに基づいて,ベンチャ企業の米レイスパンがアンテナを設計した。

 MIMOは11n無線LANのほかにも,次世代携帯電話方式の「LTE」(long term evolution)やWiMAXにも使われている。今後,これらの無線装置もメタマテリアル技術による小型化を期待できるだろう。