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中央三井信託銀行は2008年1月にサービスを開始したインターネット・バンキングで、分析から設計、実装までオブジェクト指向開発を貫いた。開発方法論を自社に根付かせるために、1年間の議論とその後1年間の先行開発をこなした。そして、本番となるインターネット・バンキングでは、予定通りのコストと納期を達成。開発効率が2倍以上に向上した。

写真1●中央三井信託銀行・本店
写真1●中央三井信託銀行・本店

 「本当にそれでやるんですか」。中央三井信託銀行が2008年1月にサービスを全面開始したインターネット・バンキング・サービス「中央三井ダイレクト」は、開発の企画当初から社内・グループ内で不安の声が相次いだ。システム開発の分析から設計、そして実装に至るまで、全面的にオブジェクト指向の技術や方法論で基幹系システムを構築するという前代未聞のプロジェクトだったからだ。

 協力ベンダーの日本IBM側も慎重にならざるを得なかった。日本IBMにとって、金融系の大規模案件を全面オブジェクト指向で開発したケースは「社内の事例データベースで調べた限り、見あたるものがない」(サーティファイド・プロフェッショナル ITアーキテクトの天羽正道氏)というほど。銀行系システムの経験が豊富な他の大手ベンダー幹部も「オブジェクト指向で通した話は聞いたことがない」と話す。

 中央三井信託銀行は、絶対に失敗できないという事情があった。今回の案件は、同社にとって、フル機能をサポートする初のインターネット・バンキング・サービス(画面1)となる。普通・定期預金に加えて、投資信託、外貨預金、住宅ローンなど各種の取引ができる。窓口での対応を減らす分、行員を顧客への直接提案業務に振り向ける。退職を控える団塊世代に各種の金融サービスを提供するための戦略的な位置づけにあるが、競合銀行に比べて後れを取っていた。

画面1●インターネット・バンキング・サービス 「中央三井ダイレクト」
画面1●インターネット・バンキング・サービス 「中央三井ダイレクト」

 勘定系メインフレームとの連携もあり、プロジェクトは大規模となる。費用は30億円弱、全体で1800人月弱の人員を投じている。慎重になるのは当然だ。システム子会社である中央三井インフォメーションテクノロジー(CMIT)の貫洞明彦・技術統括部部長は「グループや社内、ベンダーなど四方八方からオブジェクト指向で本当に大丈夫かという声は根強かった」と振り返る。

 心配の声をよそに、開発プロジェクトは、スケジュールの遅延なしで08年1月に全面カットオーバーにこぎつけた。開発効率向上の成果も得られた。生成したJavaを中心としたコードのベースで、「従来型の開発に比べて2倍強の効率アップを果たした」(貫洞部長)という。