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米DCM 伊佐山元(日本共同代表・本社パートナー)
茶尾克仁(共同創業者兼パートナー)

 本連載の第1回は,シリコンバレーに本拠を置くベンチャー・キャピタル(VC)によるトレンド解説である。VCの目から見たインターネットのトレンドは3つの軸がある。すなわち「ソーシャル・ネットワークのプラットフォーム化」,「消費者発トラフィックの爆発的な増加」,そして「世界規模で進行するモバイル革命」だ。

 世界がサブプライムを発端とする金融不振や,原油高を背景にしたインフレと景気の減速に向かう中,シリコンバレーにおけるベンチャー企業を取り巻く環境も大きく変わりつつある。現象面だけをとらえて,ベンチャー・キャピタルの投資基準が上がったとか,上場市場が実質的に活動を停止しているという悲観的な見方があるのも事実である(図1)。

図1●ベンチャー・キャピタル(VC)が投資したIT系企業の上場実績
図1●ベンチャー・キャピタル(VC)が投資したIT系企業の上場実績
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 しかし,ベンチャー・キャピタルの投資ペースは決して落ちているわけではない(図2)。歴史的に見ると,現在のようなマクロ不況期に投資家の厳しい審査をくぐり抜けて創業したベンチャー企業が,その後,優良ベンチャーとして活躍しているケースが多い。極端な例ではあるが,マイクロソフトの設立は75年,アップルは77年,まさにオイルショックで世界的な不況の中での創業である。こう考えると,今シリコンバレーのベンチャー企業の動向を正しく評価することは,5年~10年後の世界を占う上でも非常に大切だと言える。

図2●米国におけるVCの投資動向
図2●米国におけるVCの投資動向
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 現在シリコンバレーで起きている動きは,「The World is Flat」(邦題:フラット化する世界)著者のトーマス・フリードマン氏が言うところの,ビジネスの舞台のフラット化による個人へのパワーシフトとベンチャー経営のグローバル化である。このパラダイムシフトを起こした技術的な要因は,間違いなくインターネットとモバイル(携帯電話)である。90年代半ばに普及し始めた両プラットフォームが,現在のパラダイムシフトに大きな役割を果たしていることに誰も疑いの余地を挟まないだろう。

 そこで本稿では,特にインターネットとモバイルの分野を中心に,今起こっている3つのトレンドを順に考察したいと思っている。