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 電気通信事業者協会(TCA)は毎月7日前後,携帯電話の契約数を発表している。2008年8月7日には,7月末時点の数値を発表した(関連記事)。この発表でいつも注目されるのは,携帯電話事業者の月間の純増数争い。純増数とは,その月の新規獲得契約数から解約数を差し引いた数である。ニュース記事でも,「ソフトバンクが14カ月連続首位」「ドコモはイーモバに抜かれ4位に」といった見出しがおどる。

 しかし最近のTCA発表値は,以前とは少々勝手が違ってきた。どうも月間の純増数では,単純に携帯事業者の好不調をはかりにくくなってきたのだ。原因は,NTTドコモの「2in1」など1端末2番号サービスの存在である。TCAが発表する契約数上では,1端末2番号サービスを利用しているユーザーは2契約とカウント(ダブルカウント)されるのだ。

 1端末2番号サービスとは,一つの携帯電話機に二つの電話番号を持たせることができるサービスである。一つは個人用,もう一つは業務用といったように,1台の携帯電話機で番号を使い分けることができる。NTTドコモに続き,ソフトバンクモバイルも「ダブルナンバー」というサービスを2008年7月に開始した。

 1人のユーザーが新たにNTTドコモの携帯電話機を買い,同時に2in1を契約すれば,TCAの数値上はプラス2契約となる。ただし,NTTドコモの2in1対応携帯電話機を持っている既存ユーザーが,例えば業務用の電話番号が欲しいと思い,2in1を契約するとそれだけでプラス1契約とカウントされる。

 電話機を2台持ち歩いているユーザーの場合は,1人で2契約とカウントされるので,同じではないかという意見もあるだろう。しかし2in1の場合,月額基本料は840円からと格安。しかも携帯電話機を別に購入する必要はない。多額の販売奨励金がユーザー間の不公平さを生み出すことから,最近は「分離プラン」の導入が進んでおり,昔に比べて新たに携帯電話機を購入するハードルは上がっている。やはり「2台」と「1台で2契約」は,同様には語れないだろう。

ドコモの純増数9万のうち,半分は既存ユーザーによるもの?

 実際,7月の純増数争いで言うと,ソフトバンクモバイルの21万5400増に続き,NTTドコモは9万4200増で2位に付けている。ただし,このうち7万7400契約は2in1の契約分だという。なお,この7万7400契約の数値はTCAでは公表されていない。NTTドコモに直接聞いた数である。

 TCAが「別掲」として,この数値とは異なる2in1やダブルナンバーの契約数を公表していることもややこしい(TCAの発表資料)。2in1の7月の月間純増数は6万8200,ダブルナンバーは1300である。ところが,これらの数値は1端末2番号サービスをダブルカウントしたものではなく,“純然たる”2in1とダブルナンバーの延べ契約者数である。つまり2in1で言うと,7月に2in1を新たに契約した契約者数から2in1を解約した契約者数を差し引いた月間の純増数が6万8200であり,その結果を基に2in1をダブルカウントした数値が7万7400契約,ということになる。

 6万8200の純増で,回線をダブルカウントした結果が7万7400ということは,純増のうちの多くは既存ユーザーによる2in1契約とも考えられる。極端な話,解約数がゼロで,2in1を新たに契約したユーザーすべてがNTTドコモにも新規契約したと仮定すると,2in1の新規契約が6万8200あれば,一気に2契約分が増えるはずなので,ダブルカウントした純増数は13万6400となるはずだ。しかし実際は7万7400契約しかない。

 では再度,解約数がゼロと仮定してみて,2in1の新規契約が6万8200で,ダブルカウントした後の番号ごとの契約が7万7400になるのは,新規ユーザーと既存ユーザーがどれぐらいの場合だろうか。答えは,新規が9200,既存が5万9000である。もし本当にそうだとすると,「純増数9万4200増で2位」という位置づけのNTTドコモも,その数字の半分以上はドコモの既存ユーザーが稼いでいることになる。

 こういう仮の前提で話をしているのは,NTTドコモが2in1の契約者のうち,新規ユーザーによるものと既存ユーザーによるものの内訳を明らかにしていないからである。

 実は,2in1も2008年2月集計分まではダブルカウントされていなかった。しかし2008年3月にNTTドコモが2in1サービスを拡充し,番号ごとに異なる名義での契約を可能にしたことを受け,2008年3月集計分から2in1のダブルカウントが始まった。そして2008年7月からは,ソフトバンクモバイルの「ダブルナンバー」のダブルカウント集計も始まっている。

 個人用途と業務用途を分けるなど,携帯電話の利用形態が多様化している現在,2in1のような1端末2番号サービスはユーザーにとって非常に有益だ。そして,異なる名義での契約が可能な以上,集計上,2契約としてカウントすることは妥当な選択だろう。

 とはいえ,純増数の半数が既存ユーザーの1端末2番号サービス契約によってもたらせるようなことがもしあったとしたら,その事実は明らかにすべきではないかと思う。純増数のうち,2in1など1端末2番号サービスをダブルカウントした数値と新規/既存ユーザーの内訳は,きちんと公表すべきではないだろうか。