PR

 今後5年間で新たに60車種を投入し、売上高を平均5%伸ばす――。日産自動車は2008年度から2012年度までの中期経営計画「日産GT 2012」でこうコミットした。日産リバイバルプランによる企業再生を完了させ、長期的な成長に主眼を置き始めたのだ。

 新興国への市場拡大も進める。07年度には販売実績がほとんどなかったインドで12年度までに20万台、ブラジルでは同時期に1万5000台から10万台まで販売台数を伸ばす計画だ。中国、ロシア、中東地域での販売も強化する。これに伴い新興国での現地生産を加速させる。今年6月には仏ルノーと共同で、インドに年間40万台ほどの生産能力を持つ工場の建設を開始した。

 日産が進める一連の事業展開にシステムは欠かせない。新車種の投入や新工場の立ち上げ時にシステムが足かせにならないよう、開発の短期化を図る必要がある。

 日産のシステム部門が打ち出した対策はSOAの考え方を採用し、システムの“部品化”を進めるというものだ。自動車の製造と同じ発想で、部品を組み合わせてシステムを開発可能にする。工場の生産システムを開発する際に、「国内で生産・販売」「自動車用部品の発注頻度が高い」といった業務上の条件に応じて、必要なシステム部品を組み合わせて開発する。条件に応じてシステムをゼロから開発する場合に比べ、開発・保守効率を大幅に改善させる狙いだ。

入念に準備、SOAありきにしない

 実は日産は当初からSOAを目指していたわけではない。「システム開発のコストを削減しつつ期間を短縮するにはどうすべきかを突き詰めた結果、SOAの方向に進んでいた」と、グローバル情報システム本部の大関洋エンタープライズアーキテクチャー部主担は説明する。

 日産はシステムの部品化をITの視点だけで実施していない。部品を業務と関連づけ、業務の視点で互いに独立性があるように部品を規定した。低コストかつ高速に開発を進めるには、その形が最善と判断したのである。

 これはSOAの考え方にほかならない。そこでこの取り組みを「SOAアプローチ」と名づけた(図1)。昨年には生産管理システムの一部をSOAアプローチで刷新。従来手法に比べ、年間費用を36%削減できた。

図1●日産自動車の定義する「SOAアプローチ」の概要と、それを採用した背景
図1●日産自動車の定義する「SOAアプローチ」の概要と、それを採用した背景
[画像のクリックで拡大表示]

 日産がSOAに基づくシステム刷新で効果を上げた理由は大きく三つある。いずれも特別なことではなく、他の企業も応用可能だ。

 第1に、事前準備を入念に実施した。まず全社のアプリケーション資産の現状を詳細に分析し、機能やコスト、採用している技術、ビジネスにもたらす価値を細かく把握。この結果を基に部品化を効率的に進めた。

 第2に、SOAありきで考えなかった。既存システムは継続利用し、必要な機能を「サービス」として呼び出して使う、というのが一般的なSOAのセオリー。しかし同社は既存システムのロジックを生かしたものの、システムを刷新するやり方を選んだ。自社にとって最適な選択は何かを考えた結果だ。

 第3に、部品化の作業を外部に頼らなかった。業務の視点で部品化するとなると、どうしても自前でやらざるを得ない。現場作業を熟知した担当者でないと、業務にとって最適な部品(サービス)の大きさを決めるのは困難だからだ。日産のシステム要員は工場の現場の業務を熟知しており、「業務を知っている人間が考えればサービスの大きさはおのずと決まった」(大関主担)。