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システム化において現場の意見をヒアリングし,尊重することは重要だ。しかし現場の意見の多くは現状肯定の域をなかなか出ない。現場の担当者は,変化には消極的なことが普通だ。全体計画の検討時には積極的な意見を出しても,いざ具体的な方法を決める段になると尻込みする。こうした現場をまとめるリーダーは時には暴君であることが求められる。最後は自分の意地を押し通す強い勇気が,結果的に共感を得てプロジェクトを収束させる。

本記事は日経コンピュータの連載をほぼそのまま再掲したものです。初出から数年が経過しており現在とは状況が異なる部分もありますが,この記事で焦点を当てたITマネジメントの本質は今でも変わりません。

 8店舗のチェーン展開をする会員制スポーツクラブのN社は,新しい運営方法を採用することになった。バブル期には多くの企業が健康産業やスポーツクラブの経営に参入して,派手な勧誘活動を繰り広げた。しかしもはやそうした面影はすっかりない。たくさんのクラブが経営に行き詰まり,閉鎖した。現在も営業を続けているクラブは,堅実な経営を売り物に,個人の固定会員をしっかりつかんでいるところだけである。

 バブル期には法人会員が収益の柱だったが,現在は健康管理に関心の高いサラリーマンやOL,それに経済的にも時間的にもゆとりのある50歳以上の夫婦が主な顧客である。こうした人々は健康にいつも気を配り時間とお金をかけている。その意味では底堅い静かなブームが続いているとも言える。しかし,会員の目が肥えてきたこともあって競争は激化している。旧態依然としたクラブからは,会員がすぐに離れてしまうという厳しい現実がある。

会員情報の管理が問題に

 N社ではここ数カ月にわたって,新しいクラブ経営を模索する業務改革委員会を続けてきた。取りまとめをしたのが営業開発課のD課長である。業務改革委員会は最終的に,現状の問題点を次の3点に集約した。

 まず,トレーニング・メニューや体力といった会員情報を各インストラクタが個別に管理している問題である。これではインストラクタが休暇だったり,辞めてしまったりするとトレーニング・プログラムに支障が出る。さらに複数のインストラクタによる総合的なアドバイスもできない。

 2番目は,会員情報の保管の問題である。会員情報の管理をインストラクタに任せきりにしているため,古い情報は散逸してしまう。会員が一度退会した後に再入会したような場合に,トレーニング・プログラムの再会に手間がかかる上に会員の評判も悪い。

 3番目は,各会員がインストラクタと相談して決めたトレーニング・プログラムの進み具合を会員自身が見られないという問題である。これでは会員に達成感や満足感が生まれにくい。トレーニングのたびに,担当インストラクタが口頭でコメントしているが,科学的な管理に乏しいという印象を与える。

 N社では会員の入会時に,住所,電話番号,加入目的などを聞いている。ところがこうした個人情報は,会費の徴収業務にしか利用していない。そこで業務改革委員会の指摘に基づいて,個人の属性情報や入会後のトレーニング・プログラムの進ちょく情報をN社として共有すると同時に,会員自身が見えるような仕組みを早急に作ることになった。

 業務改革委員会はN社の「新会員管理システム」の構築を提言して経営会議で承認された。具体化にあたっても引き続きD課長がシステム化推進プロジェクトのリーダーを務めることになった。D課長は業務改革の推進に精力的に取り組み始めた。これを成し遂げることが,会員の要望にこたえるとともに新規会員の開拓にも役立つと考えたからだ。

 新会員管理システムの実現に向けて,D課長はできるだけ多くの生の声をシステムに反映したいと考えた。そのために,現場に近い人たちに「システム化推進プロジェクト」のメンバーとして参加することを要請した。メンバーは,各店のインストラクタやアシスタント,管理課や営業課の担当者など約20名に参加してもらうことになった。

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