PR

多くの企業におけるシステム関連従事者の人材育成問題は,掛け声ばかりのケースが少なくない。ソフト開発会社などにおいても実態はほぼ同じだ。人材育成の重要性はだれもが痛感しているが,現実はいつも一番後回しにされてしまう。システム開発現場の常識論やマネジメント・ポリシーは,そろそろ見直す時期に来ている。企業経営や事業活動に役立つシステム化を実現する原動力は,技術や道具を駆使してシステム化を推進する人間そのものなのである。

本記事は日経コンピュータの連載をほぼそのまま再掲したものです。初出から数年が経過しており現在とは状況が異なる部分もありますが,この記事で焦点を当てたITマネジメントの本質は今でも変わりません。

 電子機器製造の準大手であるS社では,販売システムを再構築することになった。大手取引先企業から受発注業務をWeb経由にするよう求められたことが直接のきっかけである。

 S社の売り上げはOEM製造販売が大半を占めているので,取引先はおおむね固定化されている。そのため,注文はこれまで営業担当者への電話やFAXなどを通じて入ってきた。しかし納期回答の煩雑さや受発注ミスを減らすには何らかの対策が必要だという議論は,これまでも社内にあった。

 S社では,Webによる受発注システムで何ができるのかを早速調べることになった。販売管理課のE課長が調査したところ,標準品はもちろんのこと個別仕様の特注品であっても工夫すれば,かなりの精度で見積もりや納期回答を自動化できそうなことがわかった。顧客担当者の不在時にも適確な受注業務ができれば,サービス品質を向上できるしS社のメリットも大きい。特にベテランの営業事務担当者が減って,取引先からの受注内容を正確に処理したり,質問に素早く答えられる者が少なくなった現状をカバーできそうな点は魅力だった。

 システム部のY部長は,今回の「新販売システム」はなるべく内部要員を活用して構築するという方針を立てた。これからはインタ-ネットをベースにするシステムが増えると見て,少しでも自前の技術力を強化しておきたいと考えたのである。

 新販売システムは,8名の専任担当者がおよそ半年間をかけて構築することになった。8名のうちの半分はY部長が指名し,残り4名は部内で希望者を募ることにした。

 S社のシステム部には約40名の部員がいる。この40名でシステム企画と現行システムの維持管理をしている。プログラム開発とシステムの運用はほとんどが外注だ。他社と同様にS社のシステム部でも要員不足が慢性化しているが,途中入社による採用はしてこなかった。新入社員として採用した者の中から毎年 1~2名をシステム部に配属している。こうした事情のため,新入社員研修が終わってシステム部に配属されるまで,パソコンしか触ったことのない者がほとんどだ。そこでコンピュータ・ベンダーやその他の研修機関を利用して基礎教育を行い,その後はOJTによって専門知識の習得を図っている。

 8名の専任担当者が決まって,新販売システム構築プロジェクトが本格的にスタートした。久しぶりに目新しい仕事が始まったことと,最新の技術に挑戦できることからだれもが張り切っていた。プロジェクト・リーダーには入社12年目のK主任が選ばれた。プログラム開発の実務作業は,これまで実績のある出入りのソフト開発会社のT社が担当することになった。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

日経クロステック登録会員になると…

新着が分かるメールマガジンが届く
キーワード登録、連載フォローが便利

さらに、有料会員に申し込むとすべての記事が読み放題に!
日経電子版セット今なら2カ月無料