PR

携帯電話の販売台数が激減している。携帯事業者3社が公表した数値をまとめると,2008年4~6月の台数は前年同期比で2割減。販売方法の変更で端末価格が上がり,買い換えサイクルも伸びた結果,端末メーカーが窮地に立たされた。自ら製品の強みを作り出せなければ生き残れない淘汰の時代に突入した。

 「想定以上に販売台数が落ちている。せいぜい10~15%程度と見ていたのだが──」。シャープの松本雅史 代表取締役 副社長は,携帯電話販売の苦しい状況を吐露する。同社が決算で発表した2008年4~6月の携帯電話の販売台数は299万台で,前年同期比で39%も減った。これは,特定の事業者の不調によるものではない。携帯電話事業者の上位3社の販売台数は,一様に前年同期比で約2割減っている(図1)。

図1●4~6月の販売台数は前年比で約2割減
図1●4~6月の販売台数は前年比で約2割減
携帯電話事業者上位3社の販売台数を比べると,2008年4~6月は1000万台を切り,前年同期比で79.4%と大幅に落ち込んだ。数値は各社の決算資料から推計。カッコ内は前年同期比の比率。

 販売数が落ち込んだ要因は,販売方法の変化による価格の上昇と,買い換えサイクルの長期化。そのきっかけは,総務省が市場活性化を目指して立ち上げたモバイルビジネス研究会である。同研究会が2007年9月に公表した報告書を受け,NTTドコモやKDDIが新料金プランを導入した(表1)。

表1●各社の料金プランと各種の利用条件
NTTドコモの「ベーシックコース」などで設定されている「購入サポート」は従来の販売奨励金に相当し,端末価格からその金額を割り引く。ソフトバンクモバイルのホワイトプランは通信料から一定額を割り引く方式を採用しており,従来モデルと分離プランの折衷型といえる。
  NTTドコモ KDDI ソフトバンクモバイル
バリューコース ベーシックコース シンプルコース(新) フルサポートコース ホワイトプラン
開始時期 2007年11月 2007年11月 2008年6月 2007年11月 2007年1月
利用期間の条件 ── 2年間(解除料は630円×残月数) ── 2年間(解除料は19カ月~24カ月目で6300円など) ──
割賦販売 12カ月,
24カ月
── 12カ月,
24カ月
── 12カ月,
24カ月
通話の月額基本料 980円~6825円(2年契約割引サービスを使う場合) 1890円~7665円(2年契約割引サービスを使う場合) 980円~7035円(2年契約割引サービスを使う場合) 1890円~7875円(2年契約割引サービスを使う場合) 980円(ホワイトプラン)
購入サポート(従来の販売奨励金に相当) なし 1万5750円 なし 2万1000円 通話料から一定額を割引(新スーパーボーナス)

 従来,携帯電話事業者は販売奨励金を販売店に渡すことで,店頭価格は抑えられていた(図2左)。明らかに原価割れの価格が並び,中には「0円」端末も見られた。販売奨励金の原資は,ユーザーの月額利用料。頻繁に端末を買い換える人にとってはメリットがあるが,同じ端末を長く使い続ける人は損をするという指摘があった。

図2●分離モデルの導入で携帯電話の販売価格が上昇<br>モバイルビジネス研究会の提案によってNTTドコモやKDDIが新しい料金モデルを導入し,販売奨励金を削減する販売方法に切り替えた。その結果,携帯電話の価格が高止まりし,買い控えを引き起こした。
図2●分離モデルの導入で携帯電話の販売価格が上昇
モバイルビジネス研究会の提案によってNTTドコモやKDDIが新しい料金モデルを導入し,販売奨励金を削減する販売方法に切り替えた。その結果,携帯電話の価格が高止まりし,買い控えを引き起こした。
[画像のクリックで拡大表示]

 この不公平感をなくすため,モバイルビジネス研究会では「通信料金と端末価格の透明性を確保する観点から,両者を分離して利用者に負担を求める料金プランの導入が検討されるべき」と事業者に示した。NTTドコモやKDDIは,販売奨励金を撤廃するプランを導入(図2右)。この結果,値引き余地がなくなり,4万~6万円の機種が店頭に並んだ。消費者には,価格が一気につり上がったように見えた。