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 BS(放送衛星)を利用した地上デジタル放送の難視聴対策(衛星セーフティーネット対策)は,2009年度末(2010年3月末)までに始まることになっている。事業開始までに1年半ほどしか残されていない現時点で事業主体(委託放送事業者)が決まっていないのには,やむを得ない事情がある。計画が浮上した時点で,事業開始までに2年を切っていたからだ。

 情報通信審議会は2008年6月27日に,「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政が果たすべき役割」(総務省が諮問)に対する第5次中間答申を出した。この中で,「地上アナログ放送が終了する2011年7月24日までに,地上系のあらゆる手段を使っても地上デジタル放送を視聴できない地域(デジタル難視聴地域)に対してBSを利用して,関東広域圏の地上デジタル放送(NHK総合テレビと同教育テレビ,民放キー局の5チャンネル)を同時再送信することが適当」と提言した。

 その後,情通審傘下の検討委員会において,(1)BSの第17チャンネルを利用する,(2)開始時期は2009年度末まで,(3)実施期間は2014年度末までの5年間,(4)同時再送信の映像はSDTV(標準画質テレビ)──といった事業の概要が固まった。こうした情通審の動きを受けて総務省は,衛星セーフティーネット対策を実施するための制度整備を2008年9月末までに終え,事業主体となる委託放送事業者の選定作業を本格化させる。

 今後の選定作業で焦点になるのは,「委託放送業務の認定申請受付がいつ始まるか」である。この点について総務省は,「通常の委託放送業務の認定作業とは異なり,今回は受付期間を公表して事業者を公募する予定はない」(衛星放送課)という。衛星セーフティーネット対策は,関東広域圏の地上デジタル放送の7チャンネルを5年間の期間限定で同時再送信するものである。そのため事業主体となる委託放送事業者は,NHKと民放キー局から再送信の同意を受ける必要がある。総務省も,「再送信同意を受けた事業者だけから申請を受け付ける」としている。

 衛星セーフティーネット対策の事業主体としては現在,デジタル放送推進協会(Dpa)が有力とみられている。しかし放送関係者の間には,「Dpa以外の事業者が参入を希望する可能性はある」という声がある。これに対して総務省は,「NHKと民放キー局が,多くの事業者に再送信同意を与えることは考えにくい」とみて,事業主体を公募する必要はないと考えているようだ。