新会社を創っていく時、創業者は何を考え、どう行動するのだろうか。会社のビジョンや社名の決定、資本金の準備、社員採用、ビジネスモデルや管理体制の確立、オフィスと情報システムの整備など、やるべきことはたくさんある。「ビジネスとテクノロジーのアグリゲーター」という新コンセプトの企業、シグマクシスを2008年5月に設立した倉重英樹が、10月からの本格始業に向けて日々思うことや活動の様子を、写真とともに綴っていく。 |
「ブログ風のCEO(最高経営責任者)日記をお願いします」。本コラムを提案してきた編集者はこう言った。言わんとするところは分かったものの、いざ文字にしようとすると簡単ではない。「毎日あったことをそのまま書いて、読者の方は面白いのだろうか」と聞いてみた。
編集者の返事は「面白いと思います。創業期のCEOが日々何をしているか、多くの読者は知らないでしょうから。ただ、毎回日記風というのも何ですから、ある回は1つのテーマについて詳しく書いてみてはいかがですか」という返事だった。そこで連載の第2回目は、ある1週間の様子を日記風に書いてみることにする。
2008年7月1日(火)
14:30 経営会議でマネジメントダッシュボードの設計
前日からの1泊人間ドックから解放され、週に1度の経営会議に出席する。CEOの私やCOO(最高執行責任者)などマネジメント、パートナークラスのコンサルタントが集まった。この経営会議は文字通りオープンだ。役員室にこもるわけではなく、フロアの一角に集まり、片隅の白壁をスクリーンにして、必要な資料を投影し、議論する。オフィスに居合わせた社員は、この一角に寄ってくれば何の議論をしているかすぐ分かる。

今日のテーマは、今後の経営会議で使用する「マネジメントダッシュボード」について。これは、シグマクシスを経営していくうえで何をマネジメントしたいのかという議論であり、ビジネスの設計思想そのものと連動する。当然、そのダッシュボードに必要な情報を集めるために、どのようなデータを、どのタイミングで、誰が、どのような手順で入力するのか、という情報システムの設計とも連動する。
ビジネスプロセス設計の責任者、情報システムの責任者、パートナークラスのコンサルタントも交じえて、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論となった。例えば「パイプラインマネジメント」の仕組みをどうするか。パイプラインとは、お客様の発掘、提案、受注にいたる一連のフェーズを指す。
各フェーズの定義をしたうえで、それぞれのコンサルタントがパイプラインマネジメントのプロセスに準じて、フェーズごとの情報をシステムに入力する。その結果をマネジメントダッシュボードで一覧できるようにする。パイプラインをどのようなフェーズに分け、どのような情報を入れるか、売り上げ予測との切り分けをどうするか、こうした事柄も新会社を設計するうえで重要な点となる。
この日は、プログラムとプロジェクトを巡っても、大議論になった。ビジネスの数字を、複数プロジェクトの集合体であるプログラム単位で見るのか、個々のプロジェクト単位で見るのか、いろいろな意見が飛び交う。ふと見回すと、コーヒーを片手にした社員たちが集まってきて周囲の机に腰かけ、我々の議論を面白そうに聞いている。いつの間にか「拡大経営会議」になってしまった。