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 「どうしてペンとノートを使っているのですか」

 ライブドアが球団買収表明を行う直前の2004年。筆者は当時,取材中だった堀江貴文氏(元ライブドア社長)に,こう質問された。

 当時の堀江氏は「ライブドアはヤフーを超えるポータル(玄関)サイトになる」と豪語していた。筆者はその宣言をはなから実現性に欠けるものだと捉え,具体策を明かすよう食い下がり続けた。堀江氏からは「うまく行くか否かは“見せ方”の問題」との回答しかなく,やはり具体的な戦略はないかのように見えた。

 「どうして無理だと言い切れるのかなぁ」と苛立っていた堀江氏の口から出たのが,冒頭の質問である。

 取材から約1カ月後。球団買収表明をして知名度が急速に高まるライブドアの関連ニュースを見ながら,冒頭の質問に「商売道具ですから」と答えた筆者に対し,堀江氏が投げかけた台詞が脳裏によみがえった。

 「どうして今ある価値観にこだわるのですか」

既存の価値観へのこだわり

 当時の堀江氏が指摘した今ある価値観へのこだわりとは,「ノートPCが飛躍的に軽量化・高性能化したのだから,記者がノートとペンにこだわる意味が分からない」ということだったのだろう。

 当然,ノートPCを使って取材することもある。しかし,大抵の取材はペンとノートを用い,そのほとんどでICレコーダを回しているのが普通だ。確かに,複数の記者が取材対象者を囲んで取材する「ぶら下がり」などノートPCを使うのが難しい場合を除き,ペンとノートにこだわる必要性はないようにも思える。

 ただ,筆者が考えさせられたのは,冒頭の質問に何の疑いもなく「商売道具ですから」と答えてしまったことだ。そのやり取りの中で無意識に固定観念に流されている自分を発見してしまい,反省すべきであると感じた。

 あれから約4年。久しぶりに対面で堀江氏へある程度の時間を取って取材したいと思ったのは,いわゆる「ライブドア事件」で逮捕されてから現在に至るまでのIT業界を,彼がどのような思いで見つめているのかを知りたかったためだ(関連記事)。

 それはIT業界から退場した堀江氏としてではない。至るところで今ある価値観にこだわらない言動が見て取れた堀江氏という人間が,今のIT業界をどのように見ているのかという意味においてだ。