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 知識共有の革新的なツールか,それとも信頼性に欠ける不完全な情報源か。フランスのジャーナリスト数人が,オンライン百科事典ウィキペディアの使われ方や運営方法,従来の百科事典との違いを検証しながら数々の問題点を考察する。

 検索サイトからワンクリックで現れたウィキペディアの内容を何の疑いも持たずに引用する──。教育の現場では,与えられた課題に対して,ウィキペディアの内容をコピー・アンド・ペーストする学生が増加している。教育者ですらウィキペディアが抱える問題を十分に気付いていないと著者は警告を発する。

 その問題とは,記載内容を疑う意識の不足にほかならない。ウィキペディアに書かれた項目は,修正の必要があれば別の利用者によって変更される。項目によっては,分単位で変更が加わることもある。つまり,その場で表示した内容が常に正しいとは限らない。

 ウィキペディアは内容の妥当性を高めるために,必要があれば,記載するべき内容をほかの利用者と議論できる仕組みを作り上げている。議論を調停するボランティアの管理者もいる。ただし,投稿数の増大によって,管理者が仲裁すべきケースは増え続けている。悪意のある荒し行為や改ざんも後を絶たない。内容はテレビ番組やおもちゃまで網羅するなど拡大を続けており,簡単に制御できない規模に達している。

 著者らは単にウィキペディアを批判し,利用しないように主張しているのではない。ウィキペディアが社会に浸透している以上は「このツールを無視するのではなく(略)行き過ぎを抑えたいだけ」と訴える。知識の習得は考察のプロセスによって成り立つべきであり,出来合いの思考としてウィキペディアに頼り切ることは危険だと説く。この考え方は,インターネットの利用全般に当てはまる。本著を読むことで,自分の思考がネット依存となっていないかを見直すきっかけとなるだろう。

ウィキペディア革命

ウィキペディア革命―そこで何が起きているのか?
ピエール・アスリーヌほか著
佐々木勉訳
岩波書店発行
1785円(税込)