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日本アイ・ビー・エム 代表取締役 社長 兼 会長 大歳 卓麻氏
日本アイ・ビー・エム
代表取締役 社長 兼 会長
大歳 卓麻氏

 IBMでは2年に1回、世界の経営者が抱えている課題や関心事を理解・分析することを目的に、世界各国の企業のCEOに直接インタビューをして「IBM Global CEO Study」という調査レポートをまとめている。その2008年版の結果をもとに考察したい。


世界の経営者が示したグローバル競争への提言

 IBM Global CEO Studyの2008年版では、この種の調査では世界最大規模となる、全世界で1130人、そのうち日本では121人のCEOを対象に対面でインタビューを実施した。2006年の調査に比べて顕著に増えたのは、「抜本的なイノベーションが必要」という回答の比率だった。全世界で前回65%だったのが、今回は83%。しかも日本だけだと96%に達している。調査結果を踏まえて、IBMでは「未来企業のあるべき姿」として以下の5つの要件をまとめた。

 1つ目は「変化の速さを機会ととらえる」ことだ。IT化と世界のフラット化により、総人口65億人がネットワークにつながって経済活動に参加するようになった。これまで30億人だった顧客あるいは活用できるスキルの対象が、約2倍になった。これに対応するには素早い変化が要求されるが、その変化が大きなビジネス機会を生む。

 2つ目は「顧客の想像を超える」ことだ。“ネットワーク顧客層”という新たな顧客が存在する。この層は、全世界につながったネットワークを駆使して情報武装し、賢くなり、要求も具体的になる。しかし、そうした顧客の想像を超えるようなソリューションを提供できる企業こそが大成功を収めるというのが、多くのCEOの見解だ。自らの発想に加え、先端をいく顧客からのアイデアを常に吸収してビジネスをイノベートしていく必要がある。

 3つ目は「ビジネスの常識を破壊する」ことだ。これまで多くの日本企業は、高度経済成長期の成功体験を拡大・再生産することで成長してきた。しかし、国内経済成長がフラットになった今、従来のやり方では発展は望めない。さらなる成長には、やり方だけでなく、やること自体も変える“非連続な”変革が求められる。

 4つ目は「環境問題・CSR(企業の社会的責任)に誠実に取り組む」ことだ。環境問題もCSRもその対応について顧客からの要求が一段と高まっており、企業には誠実に取り組むことが期待されている。裏を返せば、この分野は新たなビジネス機会にもなる。世界の名だたる企業では、前向きな姿勢で、これらの分野に取り組んでいるところが少なくない。

 そして5つ目は「世界の優れた能力を活用する」ことだ。言い換えれば、企業としてグローバル・インテグレーションをどのように実現していくかが、これからの大きなテーマになる。

今後の企業競争力で重要な新興国での“人財”確保に注力

 現在、多くの企業がグローバルで勝つ経営として目指しているのが、地球規模で経営資源の最適化を図る「Globally Integrated Enterprise(GIE:グローバルに統合された企業)」だ。IBMもこれを目指している。GIEへ向けた取り組みには、いくつかのポイントがある。

 まず、ビジネスプロセスをグローバルに標準化し、統合する必要がある。グローバル企業として全体最適化を図っていくためには、これが必須となる。この点について、IBMでは十数年前から、財務、購買、社内ITなど、業務分野ごとに責任者を置き、ビジネスプロセスの世界最適化を徹底的に追求している。成長市場への投資も重要だ。近年IBMでは、主要先進国とBRICsをはじめとした新興国への投資体制を明確に分け、成長市場である新興国への投資強化を図っている。

 また、グローバルな人財の育成・獲得も今後の企業競争力のポイントになる。IBMは現在、新興国での人財確保に注力しており、例えばインドでの社員は8万人、ブラジルでも2万人に達する勢いだ。

 売上規模でいえば米国がトップで日本は2位だが、日本の社員数は2万5000人と相対的な割合が低くなっている。インドやブラジルの社員が急増しているのは、かつては人件費の安さが大きな要因だったが、今は違う。新興国の社員たちは、カリキュラムが充実した大学で勉学に励み、入社してからも懸命に働く。こうした人財を活用できるかどうかが、今後グローバル企業の競争力に大きく影響するのは明らかだ。

 最後にGIEへ向けた取り組みのポイントとしてあげておきたいのは、価値観の共有、コラボレーション、風土の醸成を図ることだ。IBMではジャム(Jam)と呼んでいるが、価値観の共有を図るために、イントラネット上で全世界30数万の社員が討議する大規模なイベントを2003年から数回開催している。「お客様の成功に全力を尽くす」、「世界に価値あるイノベーション」、「信頼と一人ひとりの責任」の3つの「IBMers Value」も、ここから生まれた。こうした取り組みが、GIEの実現につながると確信している。