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イオン 常務執行役 グループ人事総務・企業倫理担当(前グループIT担当) 縣 厚伸氏
イオン
常務執行役 グループ人事総務・企業倫理担当(前グループIT担当)
縣 厚伸氏

 イオンは1997年から、世界に通用する小売業を目指して、2つの大きなビジネスプロセスの改革に取り組んできた。グローバルリテーラーのベストプラクティスを参考に、物流・商品・店舗・バックオフィスの業務プロセスを見直し、それを支えるITシステムも刷新した。ここでは、その改革の内容と成果についてお話ししたい。私は2001年3月から今年5月まで、グループIT担当を務めていた。

 さて、2つの大きなビジネスプロセス改革とは、商品調達コストの削減を目指した「IT物流プロジェクト」と、バックオフィス改革を目指した「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)プロジェクト」である。

 それを支えるITシステムについては、ほぼすべてを再構築の対象とした。イオン本体でのシステム再構築はすでに完了しており、現在はグループ企業に展開しているところだ。

 IT物流プロジェクトでは、「マーチャンダイジング(MD)改革」の実現を通して、プライベートブランド(PB)である「トップバリュ・ブランド」商品群の拡販やメーカーとの直接取引の推進などを目指した。

商品原価を4%削減したITを活用した物流改革

 トップバリュ・ブランドの商品群を拡販するために、2004年から需要予測と在庫補充のための協働作業であるCPFR(Collaborative Planning Forecasting and Replenishment)を実施している。CPFRを通じて、トップバリュ・ブランドの商品群を供給しているメーカーなどと、毎週の発注予定数や在庫数・出荷数、そして24週先までの週間の出荷需要予測といった情報を共有している。

 そうした取り組みから、トップバリュ・ブランドの商品群の売上高は2007年度で約2650億円と、この5年間で2倍以上に拡大し、日本で最大級のPB商品群に育った。さらに2010年度には、2007年度の売上高のおよそ3倍となる7500億円を目指している。

 またイオンは、卸を介さないメーカーとの直接取引を実現するために、自社で在庫管理ができる機能を持った物流センターを2001年から順次設置し、2005年までに全国8カ所からなる物流ネットワークを構築した。物流センターの運営については、センターごとに異なるサードパーティに依頼したが、在庫管理をはじめとした物流システムについては、イオンが開発したものを各センターとも適用した。

 これによって、物流センターの在庫と店頭在庫の一元管理が可能となった。ちなみに、この物流システムでは、物流センターなどの中間流通在庫情報は日次、店頭在庫情報は2時間ごとに更新している。

 加えて物流センターでは、構内作業を自動化するとともに、サードパーティごとのセンター運営効率を時間単位で比較してベストプラクティスを展開するなど、作業効率の向上に努めた。こうしてメーカーとの直接取引を拡大させたことによって、商品原価を4%削減できた。

PRプロジェクトによって店舗後方業務を削減する

 一方、BPRプロジェクトでは、グループ約140社での共同利用を念頭に置いて、会計システムをSAPジャパンのERPパッケージ「R/3」で、給与システムを日本オラクルのERPパッケージ「Oracle E-Business Suite」で刷新した。これによって業務プロセスの標準化を進めていき、事業部ごとに異なっていた作業の無駄を省くことができた。

 また、バックオフィスで発生する帳票類を電子化するとともに、店舗システムをすべてWeb化した。同時に無線LANの環境やハンディターミナルの整備も進めていった。さらに、店舗作業を圧迫していた電話の取り次ぎ業務を、新設した札幌のカスタマー・サポート・センター(CSC)に集約した。こうした取り組みによって、店舗で後方業務にかかわっていた人員を70%削減し、お客様サービスの強化に向けた業務に再配置することができたのである。

ビジネスインフラとして今後もますます重要なIT

 イオンがこれまで取り組んできたビジネスプロセス改革におけるIT投資の内容を改めて整理してみると、4つの領域にまとめることができる。

 1つ目は、自主MD(商品化計画)を可能とする自社物流ネットワークの構築と、商品在庫情報のリアルタイムな可視化を実現したことだ。2つ目は、計画を重視したMDプロセスの高度化と、本部・店舗間での情報共有・コラボレーションが強化されたこと。3つ目は、店舗のバックオフィス業務のオンライン化と集約化。そして4つ目は、経理業務のグループ集約化と財務会計情報の一元化を図ったことだ。

 こうしたIT投資の効果としては、先ほどお話ししたPB商品の売り上げの拡大やメーカーとの直接取引による
商品原価の削減、店舗後方人員の削減だけではない。MDプロセスにおいて、衣料品の在庫が5年間で22%減
少し粗利率が4.1%改善、店舗発注人員の約70%削減、欠品率が2~4%から1%未満に削減、といった成果も出ている。

 さらに、今回の改革に向けたITシステムが順次稼働し始めた2001年度から、2007年度まで6年間のイオンの連結業績を見ると、営業収益1.8倍、営業利益1.3倍の成長を果たしている。

 イオンは、今回のITを活用したビジネスプロセス改革によって、お客様や従業員の不満・不便を解消するためのビジネスインフラは整えることができたと考えている。そして、ITは単なる道具ではなく、今後もビジネスインフラとして、ますます重要なものになってくる。

 これからのイオンに要求されるのは、お客様の求めるサービスや満足をさらに高めるためのIT活用である。その意味ではまさしく今、スタート地点に立ったところだ。今後は、これまでの取り組みを確かなステップに、イオングループのビジネスインフラとして、競争力の向上に貢献し、一層信頼されるITを目指していきたい。