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第4世代インマルサット衛星の3号機が8月19日に打ち上げられた。これにより,全世界で最大492kビット/秒の衛星ブロードバンドが利用できるようになった。サービスを提供するKDDIや日本デジコムなどは,これを拡販の好機と見る。

 インマルサット衛星は,もともと海上を航行する船舶の安全を確保する通信手段を提供するために打ち上げられた。現在は,飛行中の航空機や,固定回線や携帯電話が利用できない陸上で幅広く使われている。

 インマルサット衛星による通信を利用するのは,大半は船舶になるが,陸上での用途も増えている。企業や官公庁などが非常時の通信に利用したり,海外出張時の一時的な通信手段に使ったりという用途がある。

 インマルサット衛星による通信は,端末と衛星,そして地上局の三つで実現する。端末-衛星間は「Lバンド」(1.6G/1.5GHz),衛星-地上局間は「Cバンド」(6G/4GHz)を利用する。

 インマルサット衛星による通信は,地上局が重要な役割を果たす。端末間で通信する際,送信側の端末が出した信号は衛星を経由して地上局に送られる。そして,地上局から衛星を経由し,受信側の端末に届く。地上局はまた,衛星の通信ネットワークと,インターネットなどを接続する役割も担う。

上下最大492Mビット/秒を実現

 現在サービスを提供している衛星には第2世代~第4世代があり,全世界をカバーしているのは第3世代まで。音声通話が主な用途で,パケット通信は最大64kビット/秒だった。

 一方,第4世代衛星の伝送速度は最大492kビット/秒。衛星ブロードバンドとして,陸上用の「BGAN(ビーギャン/ビーガン)」(broadband global area network)と海上用の「FB」(fleet broadband)の2種類のサービスがある。KDDIのBGANの場合,基本料が最も低い「プランS」で月額5000円。これにIPパケット通信料が850円/Mバイト,音声通話料金が170円/分かかる。BGANの通信端末の価格は35万~70万円程度である。

新衛星の打ち上げで全世界をカバー

 第4世代インマルサットは,全世界をカバーするのに必要な3基の衛星のうち,実際に打ち上げられていたのは2基だけだった。西日本はエリアに含まれていたが,東京を含む東日本や太平洋上の大部分で使えなかった。

 しかし,3号機の打ち上げで空白だったエリアがカバーされ,全世界で衛星ブロードバンドが利用できるようになる(図1)。新衛星によるサービスが使えるのは2009年2月の予定である。

図1●第4世代インマルサット衛星のカバー・エリア<br>最大492kビット/秒の通信速度を実現する第4世代インマルサット衛星は,これまではインド洋と大西洋を中心としたエリアしかカバーしていなかった。しかし,8月に打ち上げられた3号機によって,全世界をカバーできるようになった。
図1●第4世代インマルサット衛星のカバー・エリア
最大492kビット/秒の通信速度を実現する第4世代インマルサット衛星は,これまではインド洋と大西洋を中心としたエリアしかカバーしていなかった。しかし,8月に打ち上げられた3号機によって,全世界をカバーできるようになった。
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 全世界がカバーされることは,「営業活動を加速させるきっかけになる」(KDDI)。これまで使えない地域があるとの理由で二の足を踏んでいた大手商船会社も,導入に踏み切るという。

 東京で利用できる点も販売面のメリットだ。導入を検討する企業の本社は東京にあることが多い。これまでは東京でデモができなかったため,利用の手軽さや実効速度などを体感してもらうのが難しかった。今後は実際のデモを通して販売促進できるようになる。

 衛星通信大手のJSAT(ジェイサット)は,今回の新衛星打ち上げを新規事業の機会ととらえ,米ストラトス・グローバルと合弁で「JSATモバイルコミュニケーションズ」を8月に設立した。