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アクセンチュア
公共サービス本部 マネージャ
朝海 伸子

 前回,データセンターにおけるグリーンITについて述べたが,今回はユーザーサイドに視点を移し,オフィス環境の省電力化の進め方について解説する。

 IT機器によるCO2排出量のうちデータセンターからの排出量は約23%を占め,少数のサーバーが大量の電力を消費しているのが実態である。自動車業界に例えると大型車のような存在だといえる。

 これに対してオフィス環境からのCO2排出量は,IT機器全体の40%に達する。個々のモニタやPCからの排出量は少ないが,数千台,数万台と積み重ねられることによって膨大な排出量になっているのだ(Information Weekによる)。今回は,このようなオフィス環境に対してどのようなグリーンITの切り口が存在するかを考え,また,実際にグリーンIT化の検討を進める際に有用なツールについて紹介する。

1.オフィス環境でのグリーンITは業務との整合性を優先する

 オフィス環境でのグリーンITは,ユーザーに直接インパクトを与える領域であり,業種ごとに課題も違ってくる。ただし共通して言えることは,従来の業務効率化という評価軸に加えて,グリーン(環境負荷の低減)という評価軸を加えることや,数多くの機器に対する小さな改善(取り組み)によって大きな効果を狙える分野でもある。これらの取り組みの評価は,機器の電力消費だけではなく,総合的な観点から行うことが望ましい。

 ここでは,業務の効率化と連動した施策や,業務に与えるインパクトの少ない施策にはどのようなものがあるのか,考えてみたい。

■テレワーク

 テレワークとは,在宅ワークなど時間や場所に制約されない柔軟な働き方を指し,オンラインでのコラボレーションや,TV会議などを活用したリアルタイムなコミュニケーションを実現可能にすることを指す。

 例えば,当社のように事務所外での業務が多い業種では,TV会議を活用することにより,従業員の移動回数を大幅に削減することができる。これらの機器の追加により,IT機器によるCO2排出量は増加するが,通勤や,飛行機などを利用する出張の減少によるCO2排出量削減が期待されている。

 総務省の「ユビキタス社会の進展と環境に関する調査研究報告書」によると,テレワーク,テレビ会議の導入により2010年には基準年の1990年に比べCO2が330万トン削減されると予測されている。

 テレワークについて注目したいのは,ITを利用したグリーン効果のみではなく,業務改善や従業員のワークライフバランスの向上である。遠隔地とのコラボレーションを容易にすることにより,出張コストの削減のほか,より手軽にミーティングのできる環境が作り出される。移動時間が削減できることはもとより,地域に縛られずに適切な人材を適切なタイミングで投入できるため,業務効率を向上させる効果も期待できる。

 また,在宅勤務などの柔軟な勤務環境を提供することは,従業員満足度の向上にもつながる。例えば,育児と仕事の両立をサポートすることで,有能な女性の労働力確保の支援にもなる。

■シンクライアント

 シンクライアントでは,従業員が利用する端末に入力や表示などの最低限の機能のみを持たせ,処理やデータ管理などの機能をデータセンター側に移す。主なプロセッサパワーはデータセンター側が持つため,端末側の消費電力が極めて少なく,故障しやすい部品も少ないため,端末の寿命が長い。

 クライアントの頭脳となる機能をデータセンター側に設けるため,データセンター側の電力消費量は当然増加するが,64ビット対応などのテクノロジの進化により,サーバーの処理容量は増加傾向にあり,シンクライアントの普及率は毎年20%増加していくとの予測もある(IDCによる公開データより)。

 Verison社では,コールセンターにシンクライアントを導入することによって,電力消費の30%削減に成功したと発表しており(InfoWorld),ドイツの研究機関によるとシンクライアントの電力消費量はデータセンターを含んでもは40~50Wとなり、85W程度消費する一般的なPCに比べると大きな削減効果が期待できる(ドイツ,Fraunhofer Instituteレポートより)。

 電力消費に加えて,冗長化されたデータセンター側でデータを管理しているシンクライアントは,オフィス内での端末の二重化を不要にし,また,端末の長期利用も可能にすることから,不要なコンピュータの削減効果も期待できる。

 加えて,シンクライアントについては,管理性やセキュリティの向上を提供し得る点にも注目したい。例えば,データセンター側でクライアントを一元管理することにより運用性を高めることや,データセンター側のみでデータを持つことにより情報漏えい対策をより強固なものにすることができる。さらに,データセンター側で地震などの被災対策をとれば,オフィスで災害が発生した際の事業継続を可能にするという点においても効果が期待できる。