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 あるコンサルティング案件での出来事である。顧客の業務システム再構築に当たり,候補となるパッケージ製品とそれを取り扱うベンダーの選定がミッションであった。インターネットや各種資料を活用してざっと下調べを行い,その結果として8社にコンタクトを取ることになった。ホームページを窓口にした各社の問い合わせ対応は様々で,顧客対応のあり方を考えさせられるものであった。

 各社のホームページを見ると,1社だけが問い合わせ用のメール・アドレスを掲載しており,他の7社はすべて,問い合わせフォームへの記入形式であった。基本的に問い合わせフォームというのは,資料請求への対応を主眼として作成されているものが多い。しかし今回は,案件そのものは既に具体化しており,ベンダーと具体的な話し合いの場を持つ目的での問い合わせである。

 当方から事前にRFI(情報提供依頼書)を提示して,回答を基にベンダーとの話し合いを進めていく予定であった。RFIには,機密保持契約を結んだ上で提示すべき内容も含まれており,カウンターパートとなる営業担当者が必要だったのだ。

 問い合わせ先としてメール・アドレスを示した1社とは,メール1往復のやり取りですぐに営業担当者を紹介してもらえた。他の7社は問い合わせフォームに次の三つの情報を記載した。

(1)具体的な商談である(単なる調査ではない)こと

(2)コンサルタントとして顧客企業の委託を受けての問い合わせであること

(3)機密事項もRFIで提示するので,営業担当者を紹介してほしいこと

 問い合わせフォームを送信すると,4社から間髪を入れずにメールが来た。すべて問い合わせに対する自動返信メールである。内容はすべて「問い合わせを受け付けました。追って連絡いたします」というものだ。他の3社からは,翌日午前中までに担当予定の営業担当者から直接メールが届き,すぐにRFIをやり取りできた。

 問い合わせフォーム+自動返信メール方式の4社はというと,そのうち2社は翌日午後までに営業担当者から電話ないしメールで連絡をもらうことができた。問題は残りの2社である。

 1社はその後メールで「対象企業の業種・業態・事業規模・年商・従業員数などの情報を先にください」という連絡があった。気持ちは分からないでもないが,それらの情報を含んだRFIを提示したいので営業担当者を紹介してほしいというこちらのニーズをまったく理解していない回答であった。

 別の1社は,問い合わせ受付部門とおぼしき人からの電話で「数日内に営業から連絡が行くと思います」との連絡をもらったが,その後まったく音沙汰がなかった。これで8社のうち2社は,引き合いのチャンスすら得ることなしにアウトである。

 この2社とも,中堅から大手といってもよい規模のベンダーである。推測に過ぎないが,問い合わせフォーム+自動返信メールという「仕組み」があることに受付や営業の担当者が安住しているのではないだろうか。結果としては,自動返信がないベンダーの方が営業担当者と早くコンタクトが取れているのだ。

 もちろん自動返信が悪いわけではなく,真の問題は営業と受付部門の連絡の悪さだったり,指名された営業担当者の怠慢だったりするのだろう。しかし,問い合わせフォームというのはその会社の重要な窓口の一つである。今の時代,何かあればまずホームページを検索する。そのホームページの誘導に従って問い合わせたにもかかわらず,望む相手と満足なコンタクトが取れないとしたら,何のための仕組みであろうか。

 単なる販売機会の損失だけでなく,会社の体質まで疑われることにもなりかねない。仕組みに頼らず,人間がきちんと顧客対応を考えて行動する必要があると強く感じた一件であった。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SE を経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)