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 2008年10月1日にNHKの子会社として国際放送業務を開始した日本国際放送(JIB)は,2009年2月に番組編成を刷新するとともにインターネットによる番組配信を開始する予定である。しかし,「インターネットを使う国際放送の同時再送信は前例がなく,実現までには解決しなければならない課題がある」(JIBの広報を担当するNHKの関係者)という。

 懸念される課題として(1)権利処理,(2)根拠の明確化,(3)配信方法の3点を挙げる。権利処理については,JIBの親組織となるNHKが「NHKオンライン」サービスで映像を,「NHKワールド・ラジオ日本」サービスで音声を全世界向けにインターネット配信している実績がある。しかし「こうした『通信』扱いの配信とは異なり,JIBで実施予定の『放送』扱いの国際配信は前例がない。非営利かつ無料で行う放送の同時再送信は権利者の許諾の必要はないはずだが,実際に権利者の理解が得られるか分からない」という。

 根拠についてJIBは「放送法上,インターネット配信が国際放送業務に含まれるのか明確でなく,サービスの実施には社会的コンセンサスが必要」と考えている。放送法は国際放送のインターネット配信について直接明記していないが,2007年12月の改正により,NHKの業務としてブロードバンドなどの電気通信回線を通じて既に放送した番組などを視聴者に提供する業務である「9条2項2号業務」が追加されている。2008年3月12日に総務省が認可した「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」,いわゆる「インターネット実施基準」には,受信料を財源として外国人向け情報の提供を必要に応じ積極的に実施することが明記されている。また,国際放送のインターネット配信を放送法第9条第2項第5号にある「前項の付帯業務」として考えれば,現行の放送法で実施可能と指摘する放送行政に詳しい専門家もいる。

 配信方法に関しては,JIBの前身となるNHKの国際放送担当部署が,2008年7月にP2P(Pier to Pier)技術を使う米Joostの映像配信サービス「Joost」に番組を提供し,海外向け動画配信の実験を行っている。しかしJIBのインターネット配信にどのような技術を用いるかは検討中で,具体的な方針は決まっていないという。JIBは「権利処理を容易にするために,契約する通信事業者のネットワーク単位で順次配信エリアを拡大する」方針である。まず米国,欧州での配信を優先し,現在現地の通信事業者と交渉を始めている。海外のインターネット配信を優先することから「当面国内からの視聴はできない」という。