PR
写真●NECナノエレクトロニクス研究所の柳町成行主任研究員
写真●NECナノエレクトロニクス研究所の柳町成行主任研究員
[画像のクリックで拡大表示]

 2008年10月15~17日に開催したITpro EXPO 2008 Autumnの「グリーンITショーケース シアター」で,NECナノエレクトロニクス研究所の柳町成行主任研究員(写真)が講演,光インターコネクションの実用化に関する最新動向を解説した。

 光インターコネクションとは,光を使った通信のうち,コンピュータを設置するラック同士や,ラックに搭載されているボード同士,ボードに搭載されているチップ同士といった比較的短距離を伝送させるもののこと。高速通信に強く,消費電力を抑えられるという,光通信のメリットをデータセンターなどで生かすための研究が進められている。

 柳町主任研究員は,「ラック間をつなぐ用途での伝送距離は1メートル程度。この伝送距離だと,6Gビット/秒を超える通信なら光の方が消費電力は少ない」と指摘。一方,通信速度の増大傾向については「次世代プロトコルの規格化動向からすると,2010年には基幹ネットワークの主流は100Gビットになる。サーバー内でも,2010年には40Gビット/秒程度の通信が可能になると言われている」(同)と述べた。つまり,2010年には光インターコネクションが省電力の有力手段になる可能性が高いというわけだ。

 光インターコネクションは実装面でも有利だとした。光ファイバーでは伝送路における減衰が少ないうえ,隣接するファイバー同士のクロストーク(混線)がほとんどないため,高速な信号を飛ばす場合でも,複雑な設計が不要だという。

 「電気配線で高速な信号を飛ばすには,低速な信号をパラレル信号として飛ばすか,高速なシリアル接続を使うか,という2つのやり方がある。前者では回線数が非常に多くなるので,コネクタが大型化する。また,スキュー(タイミングのずれ)を防ぐために等長配線などの対策が必要になり,設計が煩雑になる。後者ではボード上での信号の減衰が大きくなるため,通信が高速になるほど回線長が制限される」(同)。

 ただし,光インターコネクションでは,電気信号に比べてどうしても部品点数が多くなる。また,高速な電気信号を通すには,波形の振幅を大きくしなければならないため,波形を整形する仕組みが必要だという。こうしたオーバーヘッドを考慮すると,「おおむね通信速度が6Gビット/秒で伝送距離が75センチメートル以上の用途では,光の方が電力消費が小さい」(同)ということになる。

 データセンターで光インターコネクションを採用する場合のメリットはもう一つある。「コネクタの大きさが電気の部品の10分の1~20分の1」(同)と小さいので,ラックマウント・サーバーのバックプレーンをなくせることだ。「前面に光ファイバを通して回線を集めればバックプレーンは不要だ。冷却風が流れやすくなり,省電力効果が高まる」(同)。ITpro EXPO 2008 Autumnの会場では,計40Gビット/秒の信号を飛ばせる光インタフェースを備えたシステムの例も展示した(関連記事)。

 最後に柳町氏は,今後の光インターコネクションの普及について,「1~10キロメートルといった,LANの世界を超えるような長距離の接続に光が使われていることはご存じだと思う。だが今後,プロトコルが高速化されていくにつれて,長距離だけにとどまらず,機器の内部にまで光通信が浸透してくるだろう」と述べて講演を終えた。