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図1●講演するNEDO系統連系技術グループの渡辺慶一氏
図1●講演するNEDO系統連系技術グループの渡辺慶一氏
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 2008年10月15~17日に開催したITpro EXPO 2008 Autumnの「グリーンITショーケース シアター」で,NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)系統連系技術グループの渡辺慶一氏は,太陽光発電が注目されている背景と,大規模太陽光発電所の商用化や家庭への大量導入に向けた課題などについて講演した。

 「太陽光発電は,CO2排出量が少ない,海外のエネルギー資源に依存しないなどの理由から,最近急速に注目度が高まっている」と,渡辺氏は太陽光発電の利点について説明する。こうした背景から,政府は太陽光発電の大量導入政策を進めており,2030年に5000万kWの導入を目指しているという。

 その一方で,「太陽光発電の大量導入に向けてはいくつかの課題がある」と渡辺氏。まず,太陽光発電所の場合,出力が天候によって大きく変動する。このため,電力会社の電力線に連系(系統連系)させる場合には,蓄電池を併用するなどして出力を安定させる必要がある。

 もう一つの課題は,「一般家庭に太陽光発電設備を集中的に設置して系統連系した場合,電力線の電圧が上昇して様々な問題を起こす」と,渡辺氏は指摘する。安全確保のため,市販の家庭用の太陽光発電設備には,電圧がしきい値を超えると運転が停止する機能が予め装備されている。「これが,設備の稼働率を低くする原因になっている」(渡辺氏)。家庭の太陽光発電設備の出力を適正に制御して稼働率を高めると共に,安全に系統連系する技術の研究に取り組んでいるという。

 その一例として渡辺氏は,群馬県太田市のニュータウンで行っている実証研究について紹介した。ここでは,553軒の戸建て住宅に太陽光発電設備を設置し,狭いエリアで集中的に系統連系する技術について研究を進めている。ニュータウン全体の総発電容量は2000kW,各戸の平均容量は約3.8kW。各戸の発電設備に蓄電池を接続して出力を制御し,安定した運転を実現しているという。

 一方,大規模な太陽光発電所の系統連系技術については,北海道・稚内と山梨県・北杜に,それぞれ出力5MW級(一般家庭1700世帯の消費電力に相当),2MW級の発電所を建設して実証研究を行っている(関連記事)。出力変動を抑えるため,稚内のサイトでは現在500kWのNAS電池を導入しており,最終的には1500kWに容量を増やす計画。これに対して北杜のサイトでは,大型のパワー・コンディショナー(インバータ)を独自に開発し,導入効果を検証している。

 「今後もNEDOでは,風力や燃料電池,バイオマスなどの新エネルギーの有効利用に向けた研究を行っていく」と渡辺氏は語り,講演を締め括った。