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写真1●「IPTV最前線」と題して講演する日経ニューメディアの西畑 浩憲記者
写真1●「IPTV最前線」と題して講演する日経ニューメディアの西畑 浩憲記者
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 「IPTVの新サービスとして,かなり注目すべきサービスがある。NHKオンデマンドだ。NHKオンデマンドがきっかけになり,IPTV市場が大きく盛り上がる可能性がある」。

 ITpro EXPO 2008 Autumnのメインシアターで2008年10月15日,日経ニューメディアの西畑 浩憲記者(写真1)は「IPTV最前線」と題して講演し,IPTVの現状と今後の見通しを語った。

 講演の冒頭,西畑記者は,場合によっていろいろな意味に使われるIPTVを分類し,きちんと整理してみせた。「ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)の定義によるとIPTVは,管理されたIPベースのネットワーク経由でQoS(Quality of Services)の機能を持っているマルチメディア・サービスとなる」(西畑記者)。しかし,それでは一般のインターネットで提供されている「アクトビラ」や「スカパー!Netてれび」はIPTVに入らなくなるので,実態とかけ離れているという。そこで,西畑記者はIPTVを「ネットワーク上で提供される映像配信全般」を指す言葉と定義したうえで,解説を加えていった。

 さらに西畑記者は,「リニア型」と「ノンリニア型」というコンテンツ形態と,「クローズドIP網」と「オープンIP網」というネットワーク形態の2軸を使ってIPTVを整理した。

 リニア型とは,現在放送しているテレビをIPネットワーク経由で視聴者に届けるもの。普通のテレビを見ているのと変わらないイメージのサービスである。これに対してノンリニア型は,サーバーにためてある映像コンテンツを,視聴者が見たいときに見るサービス。「レンタルビデオのようなものだ」(西畑記者)。また,ノンリニア型は,ビデオ・オンデマンド(VOD)型とダウンロード型に分かれるという。一方,ネットワーク形態で言えば,クローズドIP網はNTT東西地域会社の「フレッツ光」のような通信事業者に閉じたネットワーク,オープンIP網はインターネットを指す。

サービス開始にあたりNHKが権利者団体と積極交渉

図1●IPTVのサービス分類
図1●IPTVのサービス分類
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 では,なぜこのような分類が必要なのか。著作権法上,権利処理に違いがあるからだと西畑記者は解説する。「クローズドIP網で提供されるリニア型サービスは,著作権法上は放送に準じた権利処理ができるので,かなり簡単にコンテンツを集められる」(西畑記者)。これは図1のオレンジの部分に当たる。しかし残りのグリーンの部分は,「著作権法上,すべての権利者に事前に許諾を得なければならないため,コンテンツを集めにくい」(同)。

 それでも,オープンなインターネットで提供した方が多数のユーザーが見込めるので,「多くの事業者はオープンIP網でサービスを提供したいという意向がある」(西畑記者)。実際,インターネット回線を使うパソコン向けのIPTVサービスは,代表的なものだけでも10以上のサービスが提供されているという。これらのサービスの最近の大きなトレンドは,放送事業者が自らコンテンツを提供する動きが目立っていることだ。「12月からNHKがNHKオンデマンドという見逃し番組サービスなどを始めるし,スカパーJSATもパソコン向けの多チャンネル放送,スカパー!Netてれびを先日発表し,既に始まっている」(同)。

 中でも,最も注目すべきサービスとして西畑記者は,NHKオンデマンドを挙げた。「事業的に成功するかはフタをあけてみないとわからないが,著作権上の権利処理のルール化が確実に進む」(西畑記者)からである。

 オープンIP網で提供するNHKオンデマンドは,すべての権利者に事前に許諾を得なければならない。この点に関してNHKは,同サービスを開始するにあたって権利者団体と積極的に交渉したという。これにより,権利処理のルールのようなものが出来上がりそうだと西畑記者は解説する。「他の放送事業者やIPTVサービス・プロバイダも,ルールにのっとった形で新しいコンテンツを提供できるようになる」(同)。NHKオンデマンドをきっかけとして懸案の権利処理がスムーズに進むようなれば,IPTVの市場が広がる可能性は十分にあるというのだ。