ITpro EXPO AWARD 2008 Autumnで大賞を受賞したのがマイクロソフトのサーバー仮想化機構「Windows Server 2008 Hyper-V」だ。1台のサーバーのハードウエアを複数台のサーバーのように利用できるソフトウエアである。Windows Server 2008のx64版が標準搭載している。
Windows 2008サーバーに標準で付属しているため導入コストがかからない,Windowsサーバーと同じ方法で操作できるなど,現行のWindowsユーザーにとっての導入の敷居が低いのが特徴。仮想サーバーは,物理サーバーに比べてパフォーマンスの劣化が気になるが,マイクロソフトによれば,仮想サーバーでも物理サーバーの90~95%のパフォーマンスが出せるという。
対応するハードウエアは,インテルでは「Intel VT」,AMDでは「AMD-V」に対応したx64ベースのCPUを搭載したサーバーである。Intel VTとAMD-Vは仮想化に特化した機能。CPUがこうした機能を搭載していることも,パフォーマンスの向上に貢献している。
EXPO会場では,Hyper-V自身や関連ソフトのデモに加え「マイクロソフト仮想化パビリオン」を設置しパートナー企業11社によるソリューションも紹介した。開催日2日目の10月16日には「Microsoft Virtualization Day」をEXPO会場内で開催しセミナーも行った。
「ペアレント」と「チャイルド」のサーバーに分かれる
Hyper-Vを利用するにはWindows Server 2008でインストール作業を行う。このインストールが終了すると,仮想サーバーで動作するOSをインストールできる。この状態で,もともとインストールされているWindows Server 2008と,新たにインストールされたサーバーOSが利用できる。つまり,物理的に1台のサーバーが2台のサーバーと同じように利用できるわけだ。
Hyper-Vでは,もともとインストールされているOSを「ペアレントパーティション」,仮想サーバーにインストールされたOSを「チャイルドパーティション」と呼んでいる。チャイルドパーティションはいくつでも設定できるが,物理サーバーの性能によって実用的なパフォーマンスで利用できる数は限られる。
Windows Server 2008には「Standard」(新規購入の場合14万円),「Enterprise」(同45万4000円),「Datacenter」(46万3000円)の3種類のライセンス体系があるが,それぞれに1台,4台,無制限のWindows Server 2008をチャイルドパーティションで利用するライセンスもある。つまり,Standardならペアレントパーティション1台,チャイルドパーティション1台の計2台分のライセンスがある。Datacenterなら無制限の台数のWindows Server 2008が利用できることになる。
ただし,これはライセンス上の話であり,現実的には物理サーバーの性能によって利用できる台数の制限はある。また,チャイルドパーティションで利用するOSをWindows Server2003や2000にダウングレードするライセンスの権利もある。
複数のチャイルドパーティションが存在する場合,それぞれの動作パフォーマンスを個別に設定できる。たとえば3台の仮想サーバーを利用する場合,チャイルドパーティション全体で出せるパフォーマンスの80%を1台の仮想サーバーに,10%ずつを残る2台の仮想サーバーに割り当てるといった具合だ。データベース検索など重い処理を担当する仮想サーバーに重点的にパフォーマンスを配分するなどの用途を想定している。