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 関数電卓でBASICをかじった程度の私としては,オブジェクト指向プログラミング言語というと,つい構えてしまうし,ピンと来ない。専門書を開くと抽象的な話ばかりで,なかなかプログラム作りまで至らないのが常だった。オブジェクト指向に限らず,ITproの読者の中にも“実はプログラミングは苦手”という方は多いのではないか。

 そういう私にも,オブジェクト指向プログラミング言語「ドリトル」は,親しみやすさと分かりやすさで,プログラミングの楽しさを教えてくれた言語である(関連記事)。そのドリトルに初めての解説本である「ドリトルで学ぶプログラミング(兼宗進・久野靖 著,イーテキスト研究所 刊)」が出た。

 ドリトルとは,解説本の著者でもある兼宗進 一橋大学准教授と久野靖 筑波大学教授が作った教育用のプログラミング言語である。小学生にも教えられるように,コードは日本語,親しみやすくシンプルなユーザー・インターフェース,そしてオブジェクト指向になっている。

 なにしろ,「タートル」という亀のオブジェクトがあるのである。

タートル!作る。

とコードを書くと,画面に亀の画像が現れる。「やっぱりオブジェクト(Object,物体)なんだから,そこに現われてほしいよね」という個人的な願望が充足される瞬間だ。そこで「なんでカメ?」と思ってはいけない。それこそがオブジェクト指向なのだから。このオブジェクトに「カメ太=タートル!作る。」という具合に「カメ太」と名付けて,そのカメ太に属性を付けることで,動いたり,その軌跡を描画したり,なにかとぶつかったら判断したり,といったことができる(ちなみに名前は「カメ吉」でもなんでも,好きな名前にしてオッケーです)。

 少年にとってカブト虫とカメは,いじくりたい2大オブジェクトなのである。カメを自由に動かせるのは,これぞ男子の本懐。これくらいの仕掛けがないと,子どもの心はつかめません(筆者には女子の気持ちは分からないので,限定した表現にさせてもらいます)。

 この本の章立てを見ると,そのままドリトルでどんなことができるかが一望できる。「グラフィックスを駆使してアニメーション」「シューティングやブロック崩しなどのゲーム」「音楽の演奏」「チャットなどのネットワーク通信」「ロボット制御」…,いずれも子どもが興味を持ちそうな分野ばかりである。カメ太が歩き,カメ太が判断し,カメ太が捕食をする。カメ太を見掛け上,見えなくすることもできる。子どもにとって,科学技術計算ができるとか,データベースにアクセスできるといったことは,どうでもよいのである。

 ユーザー・インターフェースは,「実行画面」と「編集画面」がある程度。統合開発環境などのような大げさな画面はない。導入にはJavaが必要だが,ドリトルにはオンライン版もあるので,Webブラウザーでドリトルのサイトにアクセスするだけで,すぐに始められる。

 私は「簡単,簡単」と唱えているが,ドリトルにはしっかり教育的指導も残っていることを強調しておこう。子どもたち(例えば,私の息子)は,サンプル・プログラムを参考にしながら,自分で考えたゲームのコードを必死で入力する。そして,自分の書いたプログラムが発するエラー・メッセージの洗礼を受ける。「ああコードの最後につける“。”を抜かしたのか」とか「カギ括弧がちゃんと閉じてなかったのか」と悟る。その反復こそが教育なのだ。

 学習指導要領が改訂されて,平成21年度から中学校の技術・家庭科の授業で「情報処理の手順を考え,簡単なプログラムが作成できること」という項目が,必修項目になった。全国の中学生が一斉にプログラミングをする姿を想像してほしい。なかには私のような要領の悪い生徒もいるだろう。でも,このような親しみやすいプログラミング言語の存在は,先生にとっても生徒にとっても心強い。

 カメ太よ!日本の未来を切り拓け!(ちなみに韓国語版も出るそうです)