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写真1●NTTアクセスサービスシステム研究所 シビルシステムプロジェクトの飯田敏昭氏
写真1●NTTアクセスサービスシステム研究所 シビルシステムプロジェクトの飯田敏昭氏
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 2008年10月15~16日に開催されたNTTの総合技術展示会「つくばフォーラム2008」で,NTTアクセスサービスシステム研究所(AS研)が同社の通信基盤設備の防災対策・管理技術を詳しく紹介した。16日に開かれたワークショップで,「安心・安全なコミュニケーションをささえる通信基盤設備マネージメント技術」という題で,AS研 シビルシステムプロジェクトの飯田敏昭氏が講演した(写真1)。

 同氏はまず,NTTは災害対策基本法の指定公共機関であり,中央防災会議のメンバーとして,災害時の通信の確保という大切な使命を持っているとした。中央防災会議は,総理大臣と全閣僚,指定公共機関(日本銀行,日本赤十字,NHK,NTT)の長,学識経験者で構成される。

 NTTの防災対策としては,(1)ネットワークの信頼性の向上,(2)重要通信の確保,(3)サービスの早期復旧---の三つの柱を挙げた。今回の講演では,(1)の具体的な手段のうち,管路やとう道などの地下設備の強化について説明した。

 同氏は続いて,NTTの通信基盤設備がどうなっているのか述べた。同社では,地下設備を「管路系」と「コンクリート系」に分けている。管路系は,ケーブルを通す「管路」というパイプのことを指す。コンクリート系は,とう道(人が通れる程の大きさを持つケーブル敷設用トンネル)やマンホールなど,コンクリートで構成されている。現在NTTでは,管路63万km,とう道630km,マンホール69万個という膨大な設備を持っている(図1)。しかし,これらの設備は1985年のNTT民営化前に作ったもので,1985年から現在までに新規の設備はほとんど打っていないという(図2)。新規の設備は作らずに,過去の膨大な設備を徹底的に生かしていくというのが同社の考え方とした。

図1●NTTの通信基盤設備
図1●NTTの通信基盤設備
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図2●管路の建設量と不良率
図2●管路の建設量と不良率
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 次に,管路のメンテナンス技術について触れた。管路は,錆や汚れ,土砂詰まりなどによってケーブルを通しにくくなるため,診断や補修が必要となる。細かく管路の種類を見てみると,ビニール管は古くなっても不良率はあまり変わらないが,鋼管や鋳鉄管は古いほど不良率が高くなるという(図3)。

図3●管路の劣化現象
図3●管路の劣化現象
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 現在,全管路の約60%にはケーブルが通っていて,残りの約40%は空き管路である。空き管路は点検が容易なため,不良率が35%と低い。一方,ケーブルを収容している管路は59%が不良だという。同社では,こうした不良が発生したケーブル収容管路を点検・補修する様々な技術の開発に力を入れている。

 補修が必要かどうかを判断するための点検は目視に頼っているが,現在,点検を自動化する技術の開発を進めている。管路内にパイプ・カメラを通し,撮影した画像の色を分析し,錆の腐食率を定量的に算出する。

 補修する技術としては,まず高圧の水で管路内を洗浄する技術がある。2007年から実際に導入しているという。さらに,メタル・ケーブルを収容している管路の内部を補強し,さらに新規に光ファイバを収容できるスペースを設ける技術も開発している(図4)。

図4●管路の補修技術
図4●管路の補修技術
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