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北本祐子
フリーエディター&ライター
1975年,大阪生まれ,立命館大学産業社会部卒業。リクルート,日経BP,ソフトバンククリエイティブ,ITmediaなどを経て,2007年よりフリーに。IT(情報技術)系のビジネスインタビューから,インテリア,ファッション,映画レビューなど,様々なテーマで取材・執筆を手掛ける。

 本連載「あの製品を訪ねて」は,かつて我々の生活を変えた製品の開発者を今訪ねて,その開発の実際を記すものである。これまでの2回では,東芝の「Libretto 20」と,キヤノンの「IXY DIGITAL」を取り上げた。それぞれ,“持ち歩けるWindowsパソコン”と,“市場に受け入れられたコンパクトなデジカメ”という視点からである。

 どちらも製品開発のカギは小型化だった。筆者はふと思った。「小型化していなくても革新的だった製品もあったのではないか」と。そのとき目の前にあったのが,電動アシスト付き自転車である。

自転車と見分けがつかない

 電動アシスト付き自転車がこの世に登場したのは1993年。ヤマハ発動機の「ヤマハPAS」である(写真1)。


写真1●1993年に発売されたヤマハPASの初号機
写真1●1993年に発売されたヤマハPASの初号機

 何社かの競合が現れた現在も,この分野の製品でシェアNo.1を維持している。街角やテレビCMなどでおなじみの読者も少なくないだろう。

 その動きや振る舞いは自転車そのものだ。注意して見なければ普通の自転車との違いには気が付きにくい。もちろんよく見れば,大きなバッテリ,メインスイッチ,少し太いタイヤなどの違いはあるが,完全に街に溶け込んでいる。

 実際乗ってみても,乗車感覚はほとんど自転車である。メインスイッチがある以外の操作は自転車とまったく同じ。軽くペダルを踏み込むだけで,車体がグイっと進む。PASはペダルに踏み込んだ力を感知して,その力に合わせて電動モーターでアシストする。その感触は自然で,力むことなく,上り坂をスイスイと登っていく。

 この電動アシスト付き自転車は,どのような着想から,いかにして生まれたのか。静岡県磐田市,JR磐田駅からタクシーで10分ほどの距離にあるヤマハ発動機本社を訪ねた(写真2)。


写真2●ヤマハ発動機本社にあるコミュニケーションプラザ
写真2●ヤマハ発動機本社にあるコミュニケーションプラザ