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 モチベーションをテーマにした本が書店に多く並んでいる。企業にとっては大変な時代だ。社員にやる気を出してもらうシカケまで用意しないと優秀な人材は集まらず,新入社員は3年以内に去ってしまうのである。

 記者は最近,『蟹工船』(小林多喜二著)と『自動車絶望工場ある季節工の手記』(鎌田慧著)を読み直してみた。戦前・戦後の過酷な職場を見つめた2冊から改めて思うのは,今は働く人にとって幸せな時代だということ。本に描かれている世界と比較するのは乱暴かもしれないが,労働者の基本的な権利が守られるようになったのは確か。一方,劣悪な職場環境が是正されたことで労働者は働くことに,様々な要素を求めるようになった気がする。やりがいや楽しさ,社会貢献,成長している実感がなければモチベーションがわかないというわけだ。

 このモチベーションがやっかいな代物。失えば個々の社員ひいては組織の生産性が落ち込むが,喚起するための絶対解はない。本書では「VOICEモデル」という理論を提示し,働く意欲を共有価値観,成長機会,創造する楽しさ,情熱循環,能力発揮循環の5つに求めている。それぞれに応じた組織事例が興味深い。

モチベーション企業の研究

モチベーション企業の研究
野村総合研究所著
東洋経済新報社発行
1890円(税込)