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写真●古川 義之氏 名古屋銀行 執行役員 事務システム部長
写真●古川 義之氏 名古屋銀行 執行役員 事務システム部長
(写真:早川 俊昭)

 ユーザー企業がITベンダーを選ぶだけでなく、ITベンダーもユーザー企業を選別しているはず。我々は、ITベンダーに一目置かれるよう、先進的な技術や製品を積極的に取り入れて情報化を進めてきた。

 2005年に相次いで稼働させた、RFID(無線ICタグ)を使った債権書類の管理システムや、Windows上で稼働する統合顧客情報データベースの構築プロジェクトなどが、その典型である。

 債権書類を管理するシステムは、国産メーカーと共同開発したもの。当時は先進的だったこともあり、国産メーカーも本腰を入れてプロジェクトを進めてくれた。このメーカーは成果物をパッケージ化して、ドキュメント管理ソリューションとして外販している。

 統合顧客情報データベースについては、米マイクロソフトが開発中だったSQL Server 2005の採用を早い段階で決めたことで、マイクロソフトから手厚い技術支援を受けることができた。支援対象に選んだ企業は、世界で約10社だったと聞く。

 我々が先進的なプロジェクトに取り組めば、ITベンダーは当行と手を組むメリットを見い出し、最新の技術やソリューションに関する情報を提供してくれる。実際のシステム構築プロジェクトになれば、全面的に協力してくれることも多い。当社とITベンダーの強固なパートナーシップが、「より良いサービスをいち早く顧客に」といった当行の経営戦略を支えている。

 効率性が重視される世の中だが、ITベンダーの営業担当者やエンジニアには、ドライな関係ではなく、当行の社員になるぐらいの気持ちで行動してもらいたい。目を引く提案というのは、ユーザー企業と親密な関係を築いているITベンダーから出てくるものだ。

 ITベンダーにとって、ユーザー企業に意見することは勇気がいることかもしれない。だが、ITベンダーの営業担当者やエンジニアには、時にはしかるぐらいに、厳しい意見を出していただきたい。ITベンダーの意見に対して、もちろん我々も、遠慮なく注文を付ける。良い仕事をするためには必要なことだ。

 勘定系システムの開発や運用・保守を任せている、大手ITベンダーとの関係はまさにそう。腹を割って議論できる関係を築いている。この大手ITベンダーの技術者は以前、我々が発注しようとしたシステム改修案件に、真っ向から反対したことがあった。

 当時、新型の定期預金を始めるというので、我々システム部門は、従来の定期預金向けシステムの機能追加・変更で対応しようとした。ところが、このITベンダーのエンジニアが、「処理の大半を占める、通常の定期預金業務に負荷がかかるなどの悪影響が出るだろう。新商品用にシステムを別途開発するべきだ」と進言してきた。

 この提案から、もう一度、新商品にどう対応すべきか検討し直した。結果的に新システムを開発することはなかったが、エンジニアの当時の意見を非常に頼もしく感じたことを覚えている。顧客が決めたことだから、素直に従うというのではなく、システムへの影響を考え、自らの考えを述べていた。他人事ではなく、社員になったつもりで動いているITベンダーの技術者は実在するということだ。

 「顧客と業者」という関係ではなく、対等なパートナーというなら、互いに都合の悪いことでも言い合うことが大切なのではないだろうか。 (談)