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 今回からは特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(以下,「特定電子メール法」)の改正について取り上げます。特定電子メール法は,いわゆる迷惑メールを規制する法律です。これが改正され(平成20年6月6日公布),施行も間近(平成20年12月1日施行)に迫っています。

 特定電子メール法の改正のポイントは,次の2つです。

  1. オプトイン方式による規制の導入
  2. 法規制の実効性の強化

 今回はまず,1のオプトイン方式による規制の導入という,大きな方向転換について取り上げたいと思います。

あらかじめ送信に同意した相手にだけ送信を認める

 総務省のホームページに掲載されているオプトイン方式による規制に関する改正の概要は以下のとおりです。

  1. 広告宣伝メールの規制に関し,取引関係にある者への送信など一定の場合を除き,あらかじめ送信に同意した者に対してのみ送信を認める方式(いわゆる「オプトイン方式」)を導入する。
  2. あらかじめ送信に同意した者等から広告宣伝メールの受信拒否の通知を受けたときは以後の送信をしてはならないこととする。
  3. 広告宣伝メールを送信するに当たり,送信者の氏名・名称や受信拒否の連絡先となる電子メールアドレス・URL等を表示することとする。
  4. 同意を証する記録の保存に関する規定を設ける。

 1のオプトイン方式の導入は,これまで特定電子メール法が採ってきた考え方を根本的に変更するものです。これまでは,いわゆるオプトアウト方式を採用しており,広告宣伝メールであっても,特定電子メールである旨(件名に「未承諾広告※」を付ける等)の表示をしておけば,事前の同意なしに送信することは可能,ただし,受信拒否の通知をした者に対して再送信を禁止するという形の規制でした。事前同意を要求するのは営業の自由の侵害ではないか,あるいはフィルタリング技術で対応可能ではないかというのが,オプトアウト方式を採った理由ではないかと思います。

 しかし,オプトアウト方法には,拒否通知を送るとかえって迷惑メールが増加するなど,実効性に問題がありました。そこで,一定の例外を除き,オプトイン方式,すなわち,あらかじめ送信に同意した者に対してのみ送信を認める規制方式に変更することとしたのです(特定電子メール法3条1項1号)。

 なお,同意の対象は,特定電子メールの送信求める旨または送信することについての同意であり,送信する電子メールの種類や内容まで特定することを要求しているわけではありません。

名刺でアドレスを受け取った場合はオプトイン不要になる

 特定電子メール法の改正では,送信相手が以下の3つに該当する場合を,オプトインが不要な例外として定めています。

  1. 電子メールアドレスの通知をした者
  2. 取引関係にある者
  3. 自己の電子メールアドレスを公表している団体・営業を営む個人

 まず,1の「電子メールアドレスの通知をした者」ですが,条文上は「前号に掲げるもののほか,総務省令で定めるところにより(注1)自己の電子メールアドレスを送信者又は送信委託者に対し通知した者」と非常に分かりにくく規定されています。平成20年11月版電子メールの送信等に関するガイドラインでは,具体的な例として,名刺等の書面で自分の電子メールアドレスを伝えた場合には,書面の通知を受けた者(名刺を受け取った者)から電子メールの送信が行われることについての一定の予測可能性があるものと考えられるため(注2),オプトイン不要とされています。

 2の「取引関係にある者」とは,「当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者」(特定電子メール法3条1項3号)です。「取引関係にある者である受信者と広告主との間では,ビジネスの実態として広告宣伝メールの送信が問題なく行われており,また,受信者にとっても,広告主に関する広告・宣伝メールの送信が行われることが予想されうることから,オプトインの例外とされたものである」(注3)とされています。

 このほかガイドラインでは,「金融機関に口座を開設し継続的に金融商品等の購入等を行っている場合は,取引関係にある者に該当する。商品・サービスの購入については一度の購入では,必ずしも継続的な関係にあるとはいえないが以後の購入が予定されている場合には取引関係にある者といえる場合もある」(注4)という説明がされています。

 3の「自己の電子メールアドレスを公表している団体・営業を営む個人」は,比較的分かりやすいかと思います。「自己の電子メールアドレスをインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置く」(特定電子メール法3条1項3号,施行規則4条)方法で公表している場合,すなわち,Webサイトでメールアドレスを公表していた場合には,オプトイン不要ということです。

 「正当な営業活動の一環として事業者間(B to B)で電子メールを送受信する場合に,Webサイト等でメールアドレスを公開している事業者に対してビジネス向けサービス・製品の広告・宣伝メールを送信することは実態的に行われており,ビジネス慣習上も一定の範囲で認められているものと考えられる」(注5)というのがその趣旨です。ただし,電子メールを公表しているサイト上で特定電子メールの受信拒否を告知していた場合には,この例外は適用されません。

 今回は,オプトイン方式による規制に関する改正のうち,1の「同意の要不要の問題」を取り上げました。次回以降は,2~4について解説していきます。

(注1)施行規則では,「法第三条第一項第二号の規定による送信者又は送信委託者に対する自己の電子メールアドレスの通知の方法は, 書面により通知する方法とする。」となっています
(注2)平成20年11月版特定電子メールの送信等に関するガイドライン12頁
(注3)前記ガイドライン14頁
(注4)前記ガイドライン14頁
(注5)前記ガイドライン15頁

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■北岡 弘章 (きたおか ひろあき)

【略歴】
 弁護士・弁理士。同志社大学法学部卒業,1997年弁護士登録,2004年弁理士登録。大阪弁護士会所属。企業法務,特にIT・知的財産権といった情報法に関連する業務を行う。最近では個人情報保護,プライバシーマーク取得のためのコンサルティング,営業秘密管理に関連する相談業務や,産学連携,技術系ベンチャーの支援も行っている。
 2001~2002年,堺市情報システムセキュリティ懇話会委員,2006年より大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会アドバイザー,情報ネットワーク法学会情報法研究部会「個人情報保護法研究会」所属。

【著書】
 「漏洩事件Q&Aに学ぶ 個人情報保護と対策 改訂版」(日経BP社),「人事部のための個人情報保護法」共著(労務行政研究所),「SEのための法律入門」(日経BP社)など。

【ホームページ】
 事務所のホームページ(http://www.i-law.jp/)の他に,ブログの「情報法考現学」(http://blog.i-law.jp/)も執筆中。