日立製作所が提供するWebアプリケーション基盤ソフト群「Cosminexus Version 8」。アプリケーション・サーバー「uCosminexus Application Server Version 8」を中核に,情報ポータル・ソフト「uCosminexus Portal Framework」やBPM(ビジネス・プロセス管理)ソフト「uCosminexus Service Platform」など,システム基盤を構築するための20種類以上のソフトで構成される。
今回,エンタープライズ部門でITpro EXPO AWARDに輝いた「uCosminexus Navigation Platform」(写真)は,2009年2月に出荷を控えた新製品。業務プロセスを“見える化”して共有・管理する機能と,業務プロセスやその業務で使う画面を作成・編集できるツールを備える。
いずれの機能も,ユーザー部門の業務担当者が自分で使うことを想定して作られたものである。Cosminexusシリーズの中ではもっとも,業務アプリケーション寄りに位置する製品である。
その業務を熟知する人が自分でノウハウを反映
日立製作所アプリケーション基盤ソフトウェア本部第1AP基盤ソフト設計部の的池陽主任技師は,uCosminexus Navigation Platform開発の狙いを,「ユーザー自身が,業務ノウハウを簡単にシステムに反映させられるようにすること」と語る。
開発に着手したのは,2006年4月にVersion 7を発売した頃だという。「業務改善には現場のノウハウが必要だが,それをシステムにどう取り込めば生かせるか。それをずっと模索してきた」と,的池主任技師は語る。
その結果,行きついたのが,PCの画面を左右に分割し,左側に業務プロセス(フローチャート),右側にアプリケーション画面とガイダンスを表示するという形だった(画面1)。ユーザーは左側のフローチャート上の処理(例えば「本人確認」など)を順番に選び,右側に表示されるアプリケーション画面とガイダンス(例えば「お客様の生年月日をお願いします」など)を見ながら仕事を進める。
フローチャートやアプリケーション画面,ガイダンスなどは簡単な操作で編集できる(画面2)。特別なソフトは必要なく,Webブラウザさえあればできるという。「マニュアル要らずであること,PCを選ばずに使えること,を条件に開発した」(日立製作所ソフトウェア事業部販売推進部の友成文隆氏)。
作成したフローチャートやアプリケーション画面,ガイダンスは,XMLデータとしてリポジトリに保存する。該当する業務の担当者全員に配布する,といった使い方が可能だ。
uCosminexus Navigation Platformが特に効果を発揮するのは,「コールセンターに代表される応対業務のほか,一定のルールに従って進めなければならない業務全般」(的池主任技師)という。その業務のルールを最もよく知る担当者に権限を与えれば,間違えやすいところに説明文を追加したり,プロセスを見直したり,といったことが日常的に行える。
システム設計業務に適用,最大4割の工期削減に成功
今回日立製作所は,Cosminexusの販売パートナー企業向けに「uCosminexus SI Navigation System」(通称「SIナビ」)と呼ぶ対話型アプリケーションの無償提供を開始した。実は,これがuCosminexus Navigation Platformの最初の適用事例である。システム基盤の設計・構築業務の省力化を実現するという。
SIナビには,日立製作所が社内で蓄積したノウハウをまとめた「リファレンスアーキテクチャ・適用ガイド」が盛り込まれている。「システム構成を決めるには,従来は1000種類近くのパラメータを設定しなくてはならなかった。SIナビでは,質問に答えて行くことで,設定するパラメータを絞り込める。社内で評価したところ,工期を最大40%短縮できるとわかった」と友成氏は語る。
現在SIナビがカバーする業務の範囲は,「Webをフロントとするシステム」「サービスを統合するシステム」の2パターンのシステムに関する設計作業。「2009年上期中に,ERP連携,バッチ処理システム連携,ワークフロー連携など,ニーズの高いパターンを追加し,10パターン余りに増やす予定」(広報)である。
日立製作所はSIナビなどを武器に,Cosminexusの販売パートナーを現在の100社から200社程度に増やす考えだ。「参加企業にはSIナビを無償提供する。2008年12月にはパートナーによるコミュニティもスタートさせるが,SIナビを使えば,SIの業務ノウハウをパートナー間で流通させることも可能だ」と期待する。
uCosminexus Navigation Platform出荷開始は2009年2月27日だが,現在のところ単体販売の予定はない。uCosminexus Application ServerおよびuCosminexus Portal Frameworkを加えた3製品のセットで販売し,価格は840万円である。