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東京都千代田区の日本興亜損保の本社ビル
東京都千代田区の日本興亜損保の本社ビル

 日本興亜損保は、2012年度に企業活動から排出するCO2量をゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を打ち出した。300億円を投じ、省エネなどを推し進める。削減できない分は排出枠を購入する計画だ。

 企業活動から排出されるCO2の削減は、原単位削減なのか総量削減なのかが、常に問われてきた。そんななか、日本興亜損害保険が一石を投じた。企業活動から排出されるCO2排出総量を、削減はおろかゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を打ち出したのだ。「環境コンサルティング会社などを除いては、日本初の試み」(日本興亜損保経営企画部の伊藤正仁CSR部長)となる。

 同社がカーボンニュートラル宣言を検討し始めたのは、今年頭のこと。「損保と気候変動はかかわりが深い。ISO活動やエコ商品の提供以外に何かやれないかという思いが経営層にあった」(伊藤部長)。欧州を調べたところ、英アビバとスイス再保険(スイス・リー)がカーボンニュートラル宣言をしたことがわかった。保険会社だけでなく、英HSBCなど銀行も宣言していた。

 CO2排出量の多い製造業では難しいが、企業規模の割に排出量が少ない金融業界では、この流れが顕在化しつつある。伊藤部長は、「まだ日本の金融業界には前例がない。総量削減目標を掲げている企業は既に複数あり、相当高い目標を掲げないとインパクトがない。どう頑張っても15%削減が限界だとわかっていたからこそ、カーボンニュートラル宣言に踏み切った」と振り返る。

300億円を省エネなどに投資

 だが、決断までの道のりは平たんではなかった。2006年度のCO2排出量は約5万5000t。12年度までに省エネ設備などの導入費用が300億円に上ることが明らかになったのだ。それでも削減できるのは、2006年度比で15%程度。残りは排出枠の購入で相殺しなければならない。

図●日本興亜損保がカーボンニュートラル化する対象範囲
図●日本興亜損保がカーボンニュートラル化する対象範囲
注:CO2排出量は7月時点で算出した推定値で、10月末をめどに算定基準を定め、精緻化する予定

 伊藤部長は、「300億円という金額に一度は断念しようと思った」と明かす。国内ではカーボンニュートラル宣言自体の認知度が低く、それだけの資金を投じる意義が焦点となった。経営層と議論を重ねたが、最後はトップの判断で決まった。

 300億円の内訳は、まず東京都の自社ビルを、最新鋭の省エネ技術を盛り込み90億円を投じて建て替える。残り210億円は、全国に約150ある自社ビルの空調や照明などに対する省エネ投資、データセンターのサーバーの省エネ型への切り換えなどに充てる。排出枠の購入費用は2億円前後を見込むが、300 億円の予算には含んでいない。12年時点で電気代とガソリン代の節約分が年間約20億円生じる見込みで、ここから排出枠購入費を出す計画だ。

 伊藤部長は、「金融業界からの問い合わせも多く、取引先にも好評だ」と顔をほころばす。同社が口火を切って、国内でもカーボンニュートラルが広がる可能性も出てきた。