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 つい先日「企業ユーザーがVistaを導入すべき10の理由」という記事を公開した。となると,逆に企業ユーザーがWindows Vistaを導入しない理由についても触れなければ不公平というものだろう。Windows Vistaの企業ユーザーへの導入が進んでいないことには,いくつかの明確な理由がある。

 特に景気が後退局面に入ると,企業はコスト・パフォーマンスを徹底的に追及しなければならなくなる。この影響で,多くの企業がWindows XPからWindows Vistaへのアップグレードを見合わせるという選択をしている。アップグレードを行うからにはそれ相応の見返りがなければならないが,コストに見合うだけのメリットがないと考える企業が多いのだ。企業がVistaを導入しない理由として筆者が考えるものを,ここに10個挙げてみたいと思う。

理由その1●新しいハードウエアまたは大幅なハードウエア・アップグレードが必要:Vistaを利用するには新しいコンピュータを導入するのが望ましい。今使っているコンピュータにVistaを導入して満足のいくパフォーマンスを得るには,ハードウエアの大規模なアップグレードを考える必要がある。筆者の作業環境でVistaのデスクトップを動作させるために必要な最低限の要件は2Gバイトのメモリー,デュアルコア・プロセッサ,80Gバイトのハードディスク,最低256MバイトのVRAMを搭載したビデオ・カードだった。こうした条件を満たすには,ほとんどのユーザーは新しいコンピューターを購入するだろう。既存のシステムのアップグレードで対応しようとすると,かえってコストがかかってしまう。

理由その2●アプリケーションをアップグレードするための追加コスト:OSをVistaにアップグレードすると,アプリケーションのアップグレードも必要になることがある。使っているアプリケーションが最新バージョンでない場合は,アップグレードするか,少なくともVista対応パッチをインストールする必要があるだろう。アプリケーションのアップグレードには,会社で使用しているアプリケーションの数およびタイプによっては,マシンごとに莫大なコストが発生する可能性がある。また,会社全体のアップグレードをアナウンスする前に,互換性およびアップグレードで発生する問題を確認しておく必要がある。

理由その3●アプリケーション互換性の問題:最新バージョンにアップデートしても,一部のアプリケーションでは依然として互換性の問題が発生する可能性がある。ベンダーがVistaのサポートを予定していない場合,アプリケーションの変更を余儀なくされる可能性もある。筆者の環境では,VPNクライアント,会計アプリケーション,FAXアプリケーション,一部のグラフィック・プログラムで実際に互換性の問題が発生した。

理由その4●トレーニングの費用:Windows 2000からXPへのアップグレードでは,ユーザーはたいていの問題を自分で解決することができた。ただし,Vistaでは操作性が大きく変わっているためそうはいかない。多数のプログラムおよびユーティリティをVistaに移行した場合,ユーザーはそれをどうやって使ったらよいか,頭を悩ますことになるかも知れない。例えば,筆者がVistaを使い始めたときに,インストールしたアプリケーションの一覧を表示しようとした。コントロール・パネルを起動して「プログラムの追加と削除」を探したのだが見当たらなかった。このアプレットの名前が「プログラムと機能」に変わったと最終的にはわかったのだが,これを探している間は,Vistaを使うことによるフラストレーションを感じていた。

理由その5●Vistaには調整個所が多い:会社のアプリケーションをVistaが導入されたコンピュータで動かすには,悪名高い「ユーザー・アカウント制御(User Account Control:UAC)」,ローカル・ユーザー権限,そしてアプリケーション設定の変更が必要になる。これらの設定のほとんどはグループ・ポリシーで制御可能だが,変更しなければならない設定を見つけ出すのが本当に大変である。

理由その6●起動時間とパッチのインストール・プロセスに対する不満:これが筆者が感じるVistaの大きな不満の種の1つである。早いコンピュータでもVistaの起動には時間がかかる。Vista SP1で若干改善されたものの,Vistaの起動を待っている間XPならどれだけ起動が早かったかということばかりを考えてしまう。一部のパッチのインストールの際に,Vistaはパッチをインストールしてから再起動し,パッチのインストールを完了するための別のプロセスを起動して再び再起動する,という動作をする。この一連の動作が終了するまではコンピュータは使えない状態になる。筆者自身は,この再起動を2回行うパッチのインストールに,いつも会議の前に遭遇している印象を持っている。こうなると,筆者がPowerPointによるプレゼンテーションを開始するまで,みんながパッチのインストール終了を待たなければならないのである。

理由その7●ノートPCにおけるパフォーマンス問題:一般的に最新のデスクトップ・コンピュータならば,正しく設定する限りはVistaを許容できるパフォーマンスで動作させることができる。ただし,ノートPC,特にサブノートではパフォーマンスの問題が発生する場合がある。許容できるパフォーマンスを得るためには,Aeroなど一部の機能を無効にする必要がある。

理由その8●Windows XPで十分間に合う:Windows XPは安定しており,Vistaよりも既存アプリケーションとの互換性が高い。Vistaはセキュリティ面が強化されているというが,UACなど一部のセキュリティ機能は設定が非常に面倒であり,多くの会社が実際にはそれらのセキュリティ機能を使用していない。XPは完全ではないが,それでもたいていのユーザーにとって十分な機能を提供している。このため,アップグレードの購入には及び腰の会社が多い。

理由その9●生産性に関する見返りが限られている:人は大きな見返りがあれば熱心に勉強する。Vistaには素晴らしい機能も搭載されているのだが,筆者の所属する組織では残念ながら,それらを使いこなせるようになっらからといって生産性が大幅に向上したという例はない。これと対照的なのが,ユーザー・インタフェースの変更によって学習すべきことが増えているはずのMicrosoft Office 2007である。Office 2007に一度慣れてしまうと,間違いなく文書の作成時間は以前よりも短くなり,しかもより簡単に作れるようになる。このような目に見える生産性に関するメリットはVistaでは得られない。結局のところ,アップグレードには見返りが必要なのである。

理由その10●Windows 7がもうすぐ発表される:MicrosoftはVistaを失敗作と考え,慌てて次のバージョンとなるWindows 7をリリースしようとしているようだ。2010年にリリース予定のWindows 7の新機能がどのようなものであるかを見極め,Vistaは無視しようと思っている企業が多いのではないかと思う。こうした状況を見ると,VistaはますますWindows Meと同じ道をたどるように筆者には思える。