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 2004年に『Does IT Matter?』を著し,「ITは競争差異化の武器にならない」と喝破した著者による新著。米グーグルや米アマゾン・ドット・コムが運営する巨大なデータセンターは,「情報時代の原子力発電所」であり,世界中のコンピュータはいずれ,ごく少数の事業者が運用する「ワールド・ワイド・コンピュータ」に集約される-という主張はすでに「クラウド・コンピューティング」の共通認識となった。

 本書は,「なぜクラウド化するか」を論じるにとどまらず,「クラウド化が何をもたらすか」も論じる。20世紀初頭,工場を営む企業は発電機を運用し,自前で電力を得ていた。その後,電力会社が登場し,企業は「サービス」として電力を利用するようになった。「電力のサービス化」は,企業の生産効率を大幅に向上させ,自動車のような新しい巨大産業を生んだ。「コンピューティングのサービス化」も同様に社会や経済を変革すると論じる。

 しかし,「ワールド・ワイド・コンピュータが作り出した多様性の文化は,じつは凡庸の文化であることがいずれわかる」とも論じる筆者は,クラウドがもたらす未来に懐疑的だ。著者はクラウド礼賛はしない。だからこそ本書は,ITにかかわる者にとって必読の一冊だ。

クラウド化する世界

クラウド化する世界
ニコラス・G・カー著
村上 彩訳
翔泳社発行
2100円(税込)