PR
ITR シニア・アナリスト
生熊 清司

 グリーンIT簡易診断では,「コミットメント」「実施度」「運営体制」「運営プロセス」「コスト効果」の5つの軸で企業のグリーンIT度を評価しているが,ここでは各評価軸のスコア・チャートの典型的な5つのパターンを示し,それぞれの改善点と対策を説明していくことにする。グリーンIT簡易診断の利用者は,自分の結果がどのパターンに近いかを判断し,対策の参考にしていただければと思う。

パターン1:バランス型──全社でグリーンITへの理解が深く,施策も順調

パターン1:バランス型
パターン1:バランス型
5つの評価軸の獲得スコアが全て平均点以上かつ5.0点以上。

 バランス型は,5つの評価軸の獲得スコアが全て平均点以上かつ5.0点以上となっているケースで,理想的なタイプといえる(図9)。

 このタイプの企業では経営層が環境対策を自社の重要な経営課題であると認識しており,環境対策に対する具体的な施策を実行している。また,IT部門も環境対策のひとつとしてグリーンITを重要なミッションであると認識している。

 さらに具体的な活動を行うための環境整備が進ちょくしている企業である。このタイプの企業で注意する点があるとすれば,今後も継続的にグリーンITを推進するために,効果測定をきちんと実施することによって,改善点を見出し,さらに活動を推進していくことである。

パターン2:先行投資型──IT部門がやや先走り,施策が有効に実施されない

パターン2:先行投資型
パターン2:先行投資型
実施度と運営体制の評価は高いが,それ以外の軸の評価が低い。

 先行投資型は,実施度と運営体制の評価は高いが,それ以外の軸の評価が低いパターンの企業である(図10)。

 基本的に企業でのIT利用が進んでおり,IT機器に関する省エネルギー対策およびグリーンITに関する運営体制も充実しているが,IT部門の先走り感があり,経営層から十分認知されていない可能性がある。

 また,適切な利用を促すようなルール化やユーザーへの教育などが十分に施されていないために,せっかくのグリーンIT施策が有効に実行されず,継続性に欠ける懸念がある。このような企業の場合は,グリーンITの有効性を経営層とユーザーの両方に啓発するための施策や,ルールの制定,文書化による活動の継続性の確保などが望まれる。

パターン3:管理統制型──IT内部統制は進んでいるが,グリーンITへの理解は弱い

パターン3:管理統制型
パターン3:管理統制型
運営プロセスとコストと効果の評価は高いが,それ以外の軸の評価が低い。

 管理統制型は,運営プロセスとコストと効果の評価は高いが,それ以外の軸の評価が低いパターンの企業である(図11)。

 IT利用のルールや基準が整備されており,投資に対する効果測定などもきちんと実施され,全体的なIT内部統制が行き届いている。しかし,企業における環境対策の重要性やグリーンITに対する理解が弱く,統制を強化するあまり,実際のユーザーの状況やニーズと乖離する傾向がある。このため,IT部門の独り相撲に陥っており,グリーンITの実施が現場に浸透していない可能性がある。

 このような企業では,効果測定の結果を分析し,制定したルールや基準が実際の業務プロセスから乖離していないか,有名無実化していないかなどを再度点検する必要があるだろう。

パターン4:ビジョン先行型──経営者の熱意はあるが,現場に浸透していない

パターン4:ビジョン先行型
パターン4:ビジョン先行型
コミットメントの評価は高いが,それ以外の軸の評価が低い。

 ビジョン先行型は,経営層の環境対策への関心と理解──コミットメントの評価は高いが,それ以外の軸の評価が低いパターンの企業である(図12)。

 ビジョン先行型の企業は環境対策に積極的なので,グリーンITを推進しやすい土壌はあるが,IT部門の体制やルール化が伴っておらず,社内でのITの有効性に対する認知度が低いために,グリーンITが環境対策の重要な要素であると認識されていない可能性がある。

 この場合,まずは全社にIT利用全般の有効性を示し,ITを利用するうえでの基準を制定したり,IT部門の体制を整えたうえで,グリーンITに関する活動に取り組むといった手順になるだろう。

パターン5:未成熟型──経営者の理解が不足,ITの利用にも消極的

パターン5:未成熟型
パターン5:未成熟型
未成熟型は5つの評価軸のスコアが一様に低い。

 未成熟型は5つの評価軸のスコアが一様に低いパターンの企業である(図13)。

 このような企業では,経営層が環境対策そのものを重要視しておらず,全体的にIT利用も進んでいないために,グリーンITの実施に到っていない場合が想定される。

 したがってグリーンITのみを推進することは難しく,まずは今後の環境に関連する法規制の変化や経営環境に与える影響に関する情報を収集し,企業における環境対策が自社の今後のビジネスを継続するために重要な課題となるかを企業内で論議し検討することから始めることが求められる。

 グリーンIT簡易診断を利用した結果,ここに挙げた5つのパターンのどれにも当てはまらない企業もあるかと思う。特に,ある評価軸だけが,他の評価軸のスコアに比較して著しく低い結果になったときは注意が必要だ。グリーンITを推進していくうえで,何らかの問題や阻害要因がある可能性があり,原因を究明して対処する必要があるだろう。

生熊 清司(いくま せいじ)
ITR シニア・アナリスト
外資系コンピュータメーカ-のシステム・エンジニアとしてDBMS製品を中心としたシステム提案活動,製品マーケティングとして製品の日本語化プロジェクトなどの経験後,コグノス社の日本法人の立ち上げにエンジニアリング・マネジャーとして参加。1994年より日本オラクルにてUnix版Oracle7プロダクト・マネジャーとしてRDBMSを中心に製品マーケティングを担当。パラレルデータベースやデータウェアハウスなどの最新機能を世界に先駆けて紹介し,大規模な企業システムでのOracleのブランド向上に貢献する。その後,コーポレート・マーケティング部門の責任者,アナリスト・リレーション部門の日本代表などを歴任。2006年8月よりアイ・ティ・アール(ITR)にてDBMS,SOAを含むITインフラストラクチャー製品を担当。
※「グリーンIT簡易診断ツール」はこちら