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 本欄で「まだ未知数の『パンデミック』から得る教訓」を書いてから約半年。ここにきて,新型インフルエンザへの注目度が急速に高まっている(関連記事1関連記事2)。新型インフルエンザの大流行(パンデミック)を扱う報道が急増していることにお気づきの読者も多いだろう。テレビ・ドラマ映画の企画も続々と持ち上がっている。

 実は日経BP社でも現在,「ERM/危機管理」サイトの運営やイベント「ERM2008」の開催(2008年8月)といった取り組みの一環として,新型インフルエンザ対策をテーマとするコンテンツ作りやセミナー開催などを検討している。これについては近い時期に改めてご報告するとして,そもそも新型インフルエンザの話題をITpro(あるいはERM/危機管理サイト)で扱う意味は何か。

 それは,ひとえに企業の「事業継続(Business Continuity)」とのかかわりにある,と考えている。新型インフルエンザが発生した場合,企業は確実に「事業をどう継続するのか」あるいは「事業をどう縮小したり停止したりするのか」という問題に直面するからだ。

 BCM(事業継続マネジメント)を専門とするあるコンサルティング会社によれば,現在,企業の危機管理担当者が事業継続の観点で強く意識するリスクは大きく3つあるという。地震,システム障害,そして,新型インフルエンザだ。

 ただ一口に,事業継続を脅かすリスクといっても,地震やシステム障害と新型インフルエンザとでは大きな違いがある。まず,新型インフルエンザはこれまで誰も経験したことのない未知のリスクであり,あくまでも想定の範囲でしか対策を準備できない。事象が特定の場所ではなく,広範な地域(それこそ世界規模)で発生することも大きな違いだろう。

 それだけに,企業の多くはこれまで,新型インフルエンザが重大なリスクだということは重々理解しつつも,「対策にどれだけ手間とコストをかければよいのか判断できない」「BCP(事業継続計画)作りにおいて,新型インフルエンザをどう位置づければよいのか分からない」といった悩みを抱えていた。

 しかし,ここにきて国(厚生労働省)による対策ガイドラインがきめ細かく整備される一方,事業継続推進機構などのNPO法人(特定非営利活動法人)による啓蒙活動や,JISA(情報サービス産業協会)/JEITA(電子情報技術産業協会)といった業界団体による取り組み(関連記事3)も本格化してきた。それに従い,温度差はあるものの,全社を挙げて具体的な対策に取り組む企業も徐々に増えてきた。

 この話題をテレビや映画が扱い始めたことも,実は企業にとって大きな意味がある。一般大衆のレベルで関心や不安が高まったとき,企業は社会的存在として,新型インフルエンザに対する基本的なスタンスや対策の現状を問われることを覚悟しなければならなくなるからだ。もはや「分かりません」とか「国や自治体の指示に従う」といった回答だけでは許されない時期に来ているのである。

 一般企業のIT部門や,社会的なIT基盤を支える事業者が果たす役割も,改めて問われることになる。新型インフルエンザが発生すれば,「従業員の在宅作業や会社とのコミュニケーション,対外的な告知活動などに関して,ネットワークを使ったコミュニケーションの比重が格段に大きくなる」(事業継続推進機構の理事)からだ。

 新型インフルエンザを想定した事業継続の取り組みでは,地震やシステム障害と違って,事業の「継続」だけでなく,いかに事業の「縮小」や「停止」を的確に実施するか,という視点が同じくらい重要になる。加えて,自社の事業継続と社会的な要請を関連付けて考える必要も出てくる。

 企業経営者も,危機管理担当者も,IT関係者も,改めて事業継続の意味を問い直さなければならない。