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 「中国人は広告を信じない。だが,広告もしてない商品はもっと信じない」--。某世界的広告代理店の中国CEOが話してくれたときの苦笑いが印象深い。

 そう,中国人は広告を信じない。売り手が自分の商品について本当のことを言うはずがないという意識が社会背景として強く存在しているからである。だから,値札はすべて参考価格ということになる。

 店主:「200元!安いよ!」
 客:「高い!」
 店主:「安いよ!最高級の絹だよ」
 客:「100元なら買うけど」
 店主:「100元?冗談じゃないよ,それじゃ赤字だよ。180元でどう?」
 客:「150元」
 店主:「うーん,160元・・・ダメ?じゃ大サービス150元で持ってけドロボー!」

 よしよしいい買い物だった,と思っていたら全く同じものが隣で売っている。80元である。ここで「なんて酷い店主だ!ボッタクリじゃないか」と怒るのは筋違いだ。150元と言ったのは自分なのだから,責めるなら自分,つまり“自己責任”である。

 中国に限らず世界標準はむしろこちらのほうである。これは日本人が身銭を切って物を買う際に大事な価値判断を売り手に任せきりにしている場合が多いのとは対照的だ。この背景があるため,中国において売り手が商品をどんなに上手く見せようとしても所詮広告は広告に過ぎず消費者の心を動かすことは難しい。

 では何が中国人消費者を動かすのか?

 それは,親兄弟・親族・友達といった自分の信頼している人間のアドバイスである。中国人は伝統的に個人的信頼関係(地縁・血縁・友情等)を土台としたネットワーク=“圏子(チュエンズ)”を非常に大切にする。数千年もの間,様々な動乱を潜り抜けてきた中国人は,国や組織を頼りにできないことを骨の髄まで知り抜いている。そこで,彼らが唯一信じられるのは自分が築いたネットワークなのであるというのが通説となっている。

 筆者はこの伝統的なネットワークを飛躍的に増幅させたのがインターネットだととらえている。現在30代くらいまでの主要地域の中国人であれば,仕事中であろうとプライベートであろうとMSNメッセンジャーやQQ(※)を通じて常に自分の“圏子”メンバーと繋がっている。

(※)中国「騰訊(tencent)」が提供しているチャットのフリーソフトウエア。

「○○が買いたいけどどう思う?」
「某社製品の性能はよいか?」
「△△っていう店は美味しかった」
「1万8500元の見積が来たが妥当な価格だろうか?」

など,あらゆる情報と価値判断を求めるメッセージがリアルタイムで飛び交っているのだ。

 中国においても,テレビに代表される従来広告は消費者の欲望の増幅器として機能してきた。しかし,今,購買力のある中国人をアクション(購買)へ誘導するには,そのトリガーである“圏子”へ適切に働きかける必要がある。中国においてインターネット広告費が爆発的な伸びを見せている大きな理由が,この“圏子”(の内側でネットを通じて行われる情報交換)との親和性にあるといえる。

 “圏子”がネットを媒介している以上,アプローチもネット経由のほうが効率が良いのは自明であろう。個人的ネットワークに働きかける手法はバズマーケティングとして国内外で注目されているが,筆者は中国ほど口コミを介するマーケティングが有効に機能する可能性を秘めた国はないと考えている。口コミを制するものは中国市場を制する!!と言ったら言い過ぎだろうか。

本コラムは,アウンコンサルティング海外(英語圏・中国語圏)マーケティング総合情報サイト【CBM-ch】に連載中の「旬感マーケティング~グローバルマーケティングブログ~」を再録したものです。同サイトでは,海外(英語圏・中国語圏)SEOや検索連動型広告など検索エンジンマーケティング(SEM)に関する詳しい情報を掲載しています。
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