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 前回は,総務省のホームページに掲載されているオプトイン方式による規制に関する改正の概要(下記)のうち,(1)の「送信相手の同意が必要な場合と不要な場合」を取り上げました。

  1. 広告宣伝メールの規制に関し,取引関係にある者への送信など一定の場合を除き,あらかじめ送信に同意した者に対してのみ送信を認める方式(いわゆる「オプトイン方式」)を導入する。
  2. あらかじめ送信に同意した者等から広告宣伝メールの受信拒否の通知を受けたときは以後の送信をしてはならないこととする。
  3. 広告宣伝メールを送信するに当たり,送信者の氏名・名称や受信拒否の連絡先となる電子メールアドレス・URL等を表示することとする。
  4. 同意を証する記録の保存に関する規定を設ける。

 今回は,概要の(2)から(4)の問題を取り上げます。

同意後でも改めて拒否の意思表示があれば送信は禁止

 (2)の,「あらかじめ送信に同意した者(略)送信をしてはならないこととする」は,同意を得ていた,取引関係にある,自己のメール・アドレスを公表しているとして同意が不要とされている,などの場合であっても,広告宣伝メールの受信拒否の通知を受けた場合(オプトアウトがされた場合)には,それ以降は広告宣伝メールを送信できなくなる,というものです(特定電子メール法3条3項)。

 これまでも,同意を得ていない特定電子メールの送信を禁止するオプトアウトの制度は導入されていました。改正後はさらに,同意をいったん得ている場合でも,送信相手から拒否の意思表示があれば,オプトアウトに応じる必要が出てきたわけです。これは,「受信者が特定電子メールの送信に同意した場合であっても,実際に広告・宣伝メールを受信した結果,その後の受信を望まないこともあることから,オプトイン規制を円滑に機能させるという観点」(注)から導入されたものです。

 なお,特定電子メール法3条3項のただし書きは,電子メールでの広告または宣伝が付随的な場合については,受信拒否の通知(オプトアウトの通知)があった場合であっても,広告宣伝メールの送信を認めています。具体的には,施行規則第7条で下記のように定めています。

ア)契約に伴う料金請求等やサービス内容の変更のための事務連絡等の電子メールに付随的に広告・宣伝が含まれる場合
イ)いわゆるフリーメールサービスを利用して送信する電子メールに付随的に広告・宣伝が含まれる場合
ウ)契約の前段のやりとりとして顧客から行われる問合せに対する返信等に付随的に広告・宣伝が含まれる場合

 すなわち,広告・宣伝とは別の目的を主目的として送信される電子メールに広告・宣伝が付随的に含まれる場合で,それが社会的に相当なものとして認容されているような場合にまで,オプトアウトを認めることは相当ではない。第7条では,そうした条件に当てはまる場合については広告宣伝メールの送信が認められているのです。

メールには送信者の身元を明示する表示が義務付けられる

(3)の「広告宣伝メールを送信するに当たり(略)表示することとする」という表示規制は,オプトイン方式を機能させるために,事前同意を通知した相手等から送信された特定電子メールであるかどうかを,受信者が容易に判断できるようにするため設けられたものです。

 具体的には,特定電子メール法4条1号,2号で以下のような表示が必要になると定められています。

  1. 特定電子メールの送信に責任のある者の氏名
  2. 受信拒否の連絡先となる電子メールアドレス又はURL

 また,前述のオプトアウトが不要な例外を除き,次の表示が必要です(特定電子メール法4条3号,施行規則10条)

  1. オプトアウトの通知ができる旨の記載
  2. 送信責任者の住所
  3. 苦情や問い合わせ等を受け付けるための電話番号,電子メールアドレス又はURL

 これらは表示すべき場所も,施行規則で以下のように定められています。

ア)送信責任者の氏名・名称及びオプトアウトの連絡先となる電子メールアドレス又はURLについては,受信者が容易に認識することができる任意の場所
イ)送信責任者の住所,苦情等を受け付けるための電話番号等については,リンク先を含む任意の場所
ウ)オプトアウトの通知ができる旨の表示については,オプトアウトの連絡先となる電子メールアドレス等の前後

同意取得の記録は配信停止の1カ月後まで保存する必要がある

 特定電子メール法の改正は,相手の同意を取らなければならなくなった点で広告宣伝メールの送信側にとって規制の強化となります。この改正に関連して送信者側の負担となるのは,(4)の“同意を証する記録の保存”でしょう。この点に関して,保存内容は次のア),イ)のうち,いずれかの方法を採ることができるとされています。

ア)同意を取得している個別の電子メールアドレスに関し同意を取得した際の時期,方法等の状況を示す記録

イ)特定電子メールのあて先とすることができる電子メールアドレスが区別できるようにされている記録に加えて,以下の区分に応じた記録

  • 書面を提示,又は交付することにより同意を取得した場合
    当該書面に記載した定型的な事項の記録
  • 電子メールの送信をすることにより同意を取得した場合
    当該電子メールの通信文のうち定型的な部分
  • ウェブサイトを通じて通信文を伝達することにより同意を取得した場合
    当該通信文のうち定型的な部分(同意の取得に際して示す当該ウェブサイトの画面構成)

 同意を証する記録については,当該記録に係る特定電子メールを送信しないこととなった日から1カ月間を経過する日まで保存しなければなりません。

 イ)の方法による場合には,同意取得文面については,定型部分の保存で足ります。ただし,「あて先とすることができる電子メールアドレスが区別できる」ことが要求されていますので,同意対象となったメール・アドレスをどのように管理するのかが問題となります。今回の改正では,同意を証する記録は,当該記録に係る特定電子メールを送信しないこととなった日から1カ月間を経過する日まで保存しなければなりません。ですから,例えば,これまで広告宣伝メールの配信停止の希望があった際に電子メール・アドレスを削除するようなシステムであった場合,システムを修正して,1カ月間は何らかの形で送信先の電子メール・アドレスを保存しておく必要が出てくることになります。

 なお,上記のオプトインの例外にあたる場合には,当然ながら同意を証する必要はありませんから,記録保存義務は生じません(特定電子メール法3条2項の反対解釈)。

 次回は,特定電子メール法の「2.法規制の実効性の強化」に関する改正点,さらに同種の規制の改正である「特定商取引に関する法律施行規則」の一部改正について,特定電子メール法の規制とどのような点が異なるのかを検討していきます。

(注)平成20年11月版電子メールの送信等に関するガイドライン18頁参照

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■北岡 弘章 (きたおか ひろあき)

【略歴】
 弁護士・弁理士。同志社大学法学部卒業,1997年弁護士登録,2004年弁理士登録。大阪弁護士会所属。企業法務,特にIT・知的財産権といった情報法に関連する業務を行う。最近では個人情報保護,プライバシーマーク取得のためのコンサルティング,営業秘密管理に関連する相談業務や,産学連携,技術系ベンチャーの支援も行っている。
 2001~2002年,堺市情報システムセキュリティ懇話会委員,2006年より大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会アドバイザー,情報ネットワーク法学会情報法研究部会「個人情報保護法研究会」所属。

【著書】
 「漏洩事件Q&Aに学ぶ 個人情報保護と対策 改訂版」(日経BP社),「人事部のための個人情報保護法」共著(労務行政研究所),「SEのための法律入門」(日経BP社)など。

【ホームページ】
 事務所のホームページ(http://www.i-law.jp/)の他に,ブログの「情報法考現学」(http://blog.i-law.jp/)も執筆中。