中国へのオフショア開発をテーマにした書。著者は中国のオフショア開発専業ベンダーに在籍するなど,現場の事情に精通している。だからこそ,これだけの内容を盛り込めたのだろう。失敗事例,技法,理論,最新動向など,ITエンジニアが知りたいことが網羅されている。著者はオフショア開発を異文化コミュニケーションととらえている。この前提で関連理論を紹介しつつ,具体的な技法を説明しているので納得して読める。
第2部「外国人IT技術者に向けたドキュメント作成の留意点」だけでも読む価値がある。文書作成10技法としてまとめられており,それによると「カタカナ英語」(例えばabortをアボートと表記)はご法度とのこと。なぜなら,日本語と中国語では発音が違うので英単語を想起できず,カタカナ英語は辞書で調べられないのだとか。日本人の作成するドキュメントが中国人からどう見えるかが分かり,興味深い。
オフショア開発に失敗する方法
幸地 司著
ソフト・リサーチ・センター発行
2940円(税込)