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携帯電話の販売不振が止まらない。各事業者の販売台数はいずれも減少。3社合計の上期(4~9月)販売台数は,対前年比で約20%減となった。不振を挽回しようと,各事業者はエージェントやウィジェット機能といったサービスを強化。新しさを訴求するとともに,ARPU向上を含めた事業の再活性化を狙う。

 各携帯電話事業者は10月末から11月初頭にかけて,冬商戦向けの新端末を発表した。各社が端末の性能向上以上にアピールしたのが,各ユーザーに最適化した情報を自動配信する新たなサービス。「エージェント」や「ウィジェット」と呼ばれる機能を各社の端末が軒並み搭載し始めたのだ(図1)。

図1●各社が情報配信サービスを拡充<br>販売台数の回復を目指す各携帯電話事業者は,年末商戦向け端末の新サービスに期待をかける。ユーザーに合わせた情報を配信するエージェント,ウィジェット機能が登場した。iPhoneのようなネット連携を重視したタッチパネル端末も増えている。
図1●各社が情報配信サービスを拡充
販売台数の回復を目指す各携帯電話事業者は,年末商戦向け端末の新サービスに期待をかける。ユーザーに合わせた情報を配信するエージェント,ウィジェット機能が登場した。iPhoneのようなネット連携を重視したタッチパネル端末も増えている。
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コンシェルジュが自動配信

 エージェントとはユーザーの行動や好みに合わせた情報を自動配信する機能,ウィジェットとは待ち受け画面に配置するネット・サービスの窓口となるアプリケーションのことである。iモードなど既存サービスの加入者は頭打ち。そこで各事業者は既存サービスの延長線上にある新たなサービスの“プラットフォーム”を提供することで,ユーザーの目を引き付けるとともに,収益を向上させる考えだ。

 NTTドコモは冬商戦向け端末の発表と同時にエージェント・サービス「iコンシェル」を発表。11月から一部の端末向けに提供を開始する。ユーザーの誕生日,性別,居住地といった属性をサーバー側で管理し,必要とされる情報を自動配信する。例えば,最寄り駅の鉄道で事故が発生して運行停止となったら,待ち受け画面にメッセージを表示する。好みのスポーツチームの試合日程やチケット発売日をカレンダーに表示する機能,レストランのクーポンを配信する機能もある。

 「“~ができる携帯”ではなく“~してくれる携帯”」とNTTドコモの山田隆持代表取締役社長はiコンシェルのコンセプトを説明する。さらにiコンシェルは,同社の新事業への布石でもある。将来は,不特定多数のユーザーの行動をとらえた膨大なデータを使い,街づくりや道路設計に生かすという構想を練っている。

 KDDIも2009年1月から,待ち受け画面上にユーザーの行動や好みに合わせた情報を配信するエージェント機能の提供を開始する。画面上のキャラクタとの対話,通話やメールの利用履歴,GPS(全地球測位システム)による位置情報によって,ユーザーの好みや属性に合った情報を自動配信する。開始当初は試験版を無料で提供するが,将来は正式サービスとして有料化を検討している。

ウィジェットで情報を貼り付け

 あたかもパソコンのデスクトップ画面のように,待ち受け画面にアプリケーションを貼り付けるウィジェット機能を備える端末も登場した。検索ウインドウ,株価,ニュース,地図など各種の情報を表示できる。

 NTTドコモは新端末10機種でウィジェットの表示に対応。約60のウィジェットを用意する。無料で利用できるもののほか,有料のiアプリと同様に月額情報量を支払うものもある。

 ソフトバンクモバイルが発表したウィジェット機能は,10月末の発表時点ではシャープ製の端末1機種だけが対応。ヤフーと共同で「ウィジェットストア」を開設し,100以上のウィジェットをそろえるという。サード・パーティがウィジェットを作成できる開発キットも開発者に向けて公開した。

 KDDIは既に待ち受け画面で好みの情報を受信できるサービス「au one ガジェット」を提供済みだ。

 エージェントやウィジェットは,携帯電話事業者のARPU(1契約者あたりの月間収入)を引き上げる手段でもある。例えばNTTドコモのiコンシェルの料金は月額210円。さらにウィジェットのダウンロードや情報の更新時は,パケット通信料が必要だ。

 こうしたサービスを強化する背景には,深刻な端末の販売不振がある。各事業者の第2四半期決算から販売台数を算出すると2008年7~9月期は前年同期比で23.4%減少した(図2)。携帯電話事業者別ではNTTドコモは19%減,ソフトバンクモバイルは17%減,KDDIにいたっては34%減だ。

図2●7~9月の携帯電話の販売台数は前年比で2割以上の落ち込み<br>携帯電話事業者3社を合わせた販売台数は,2008年4~6月に引き続き2割以上の落ち込みとなった。数値は各社の決算資料から算出。カッコ内は前年同期比の比率。
図2●7~9月の携帯電話の販売台数は前年比で2割以上の落ち込み
携帯電話事業者3社を合わせた販売台数は,2008年4~6月に引き続き2割以上の落ち込みとなった。数値は各社の決算資料から算出。カッコ内は前年同期比の比率。
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 販売不振の要因は,(1)販売奨励金の減少などで端末価格が上がったこと,(2)割賦販売の浸透で買い替えサイクルが伸びたこと──が挙げられる。景気悪化による影響も大きい。KDDIの小野寺正社長兼会長は決算会見で「過去において,台数が景気に左右されることはなかったが,今回はある程度の影響がある」と厳しい状況を吐露した。

販売減でもラインアップは維持

 各携帯電話事業者の第2四半期決算を見ると,ソフトバンクを除いて携帯電話事業は増益で好調。だが,音声の準定額制料金の導入などでARPUは減り続けている。携帯電話事業者としては,このまま端末の販売台数が減り続ければ,ARPUの減少と共に収益も落ち込んでいく。「あくまで販売台数を増やす施策を取る。そのためにユーザーに受け入れてもらえる端末とサービスを合わせて出す」(KDDIの小野寺社長)という姿勢は崩せない。

 NTTドコモの山田社長は10月末の決算会見で,「上期は販売台数が20%落ちた。通年では15%を目指すが,そのために下期は10%減に抑える」と,下げ幅の食い止めを重点項目として掲げている。実際,販売不振の中,同社は昨年の冬モデルとほぼ同数の22機種を投入する。端末のシリーズ名も一新した。これまで同社製品は,上位モデルを「90Xi」,下位を「70Xi」としていたが,ファッション重視の「STYLE」,ビジネス向けの「SMART」など4シリーズに分類。型番も変更した。

 KDDIは画質重視の端末など8機種を投入。ソフトバンクモバイルは16機種と昨年の冬よりも6機種増やした。

 各社の新端末は,待ち受け画面やアプリの視認性を上げる大画面化,操作性を向上させるタッチパネルの採用が進んでいる。エージェントやウィジェットとこれらの端末の組み合わせの魅力をいかにユーザーに訴求するか。各社の手腕が問われる。