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 中堅・中小企業向けにSaaS(Software as a Service)形式でERP(統合基幹業務システム)やCRM(カスタマ・リレーションシップ・マネジメント)を提供している米ネットスイートが2008年12月9日,ERP新版の記者発表会を開催した(関連記事)。記者は残念ながら別件で取材できなかったのだが,今回の発表会には久しぶりにネットスイートのCEO(最高経営責任者)であるザック・ネルソン氏が同席し,熱弁を振るったそうだ。

 今から3年ほど前の2006年3月,ネットスイートは記者会見を開いて日本法人の設立を発表した。ネルソン氏はそのとき,SaaSというコンセプトがいかに優れているか,独SAPなどの“パッケージ”がいかに時代遅れであるかを力説していた(関連記事)。

 記者はといえば,SaaSという言葉をそのとき初めて聞いたこともあって,「ASP(Application Service Provider)と何が違うの?」と少々混乱した。さらにネルソン氏の話に一定の説得力を感じながらも,「(2000年前後に登場した)ASPがあまり普及しなかったのに,SaaSがうまくいくのだろうか」と懐疑的になったことを覚えている。今となってはお恥ずかしい話だが,前掲の関連記事には当時の懐疑的な気持ちを反映して,ネルソン氏の発言を揶揄(やゆ)する記述もある。

 それから3年近くが経ち,SaaSという言葉はご存知のようにすっかり定着した。セキュリティなどいくつかの課題は残るものの,ブロードバンド環境の低価格化や,ハードウエア・リソースを有効利用する仮想化技術のおかげで,SaaSは現実的な選択肢になりつつある。最近では,CRMやERPのようなアプリケーションだけでなく,ストレージやプロセッサといったインフラの機能までネット経由で提供する“クラウド・コンピューティング”というキーワードに包含されて,いささか陰が薄くなった印象さえある。

 こんな昔話を思い出したのは,2009年の新年企画として「読者が選ぶ注目のITキーワード」という調査記事の準備をしていたためである。ほぼ1年前に実施した2008年の新年企画では,SaaSは「マネジメント/情報システム分野」のキーワードとして第2位, 全体でも堂々の第7位にランクインしている(関連記事)。

 IT関連のキーワードには,いくつかの登場パターンがある。一つは,これまで存在していなかった新しい技術やコンセプトの“名前”である。その技術・コンセプトを開発した企業・個人,あるいは標準化団体や学会が名称を決めて,それが世間で注目されれば,文句なく「注目のキーワード」となる。

 まぎらわしいのは,ASPがSaaSに変わったような「看板の書き換え」である。SaaSの場合,「ネット経由でアプリケーションの機能を提供する」という定義はASPと変わらなくても,それを取り巻く環境が変わったことを示すために看板を書き換える必要があった(関連記事)。売る側の事情に過ぎないと言われればその通りだが,好意的に解釈すれば,提供側が看板を書き換えてまで力を入れようとしていること自体に,注目する理由があるとも考えられる。

 「読者が選ぶ注目のITキーワード」の候補リストは各分野の専門記者に相談しながら作成した。調査は来週から実施する予定で,開始したらメールなどで改めて告知させていただく。単なるマーケティング用語ではない「本当に注目すべきキーワード」を,ぜひ読者自身の目でお選びいただきたい。