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 Web2.0という言葉を以前ほど見かけなくなった。3年ほど前は話題のキーワードであり、筆者もそれに便乗し、以下に再掲する『「Web2.0」から「社員2.0」そして「企業2.0」と「日経ビジネス2.0」』というコラムを書いた。これは2006年4月3日付で日経ビジネスオンラインに公開したものだ。

 2年半経った今、読み直してみると、経営とITを巡る基本について書いた箇所はさほど古くなっていないものの、「2.0」を乱発している部分がなんとも古臭い。「本コラムも2.0を目指したい」という下りなど、書いた本人が言うのはおかしいが、軽薄である。流行語に乗って原稿を書いてはいけない、という見本と言える。なお、2006年5月15日付で公開した続編『「記者1.5」を目指し、動画像と双方向性を活用』も同時に再掲した(『続・「Web2.0」から「社員2.0」と「企業2.0」へ、そして「社会2.0」』)。「記者1.5」という表現も恥ずかしいが、そのまま残してある。

(谷島 宣之=経営とITサイト編集長)

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 「そんな仕事のやり方では、2.0とは言えないね」。

 「あの上司の応対は1.0以前だよ」。

 IT(情報技術)の世界、とりわけインターネット関連の仕事をしている人々の間で、こうした言い方がされるようになった。1.0や2.0という数字は、第1世代、第2世代をそれぞれ意味している。

 例えば「社員2.0」という言い方がある。大手コンピューターメーカーの1社、サン・マイクロシステムズはWebサイトで、社員1.0と社員2.0の違いを対比した表を公開している。それによると、自分のミッションを超えて仕事をする社員が2.0、ミッション以外の仕事はやらない社員が1.0、イノベーティブな発見や出会いが1日最低1回ある社員が2.0、ミーティングが葬式のように暗い社員が1.0、などとなっている。とにかくたくさん本を読んでおりブログも読む社員が2.0、すべての情報源が日本経済新聞あたりだけだったりする社員が1.0、というくだりもある。

 物事を1.0と2.0に分ける表現は、「Web2.0」という流行語から来ている。Web2.0はこのところ取りざたされている言葉で、インターネットの利用方法が第2世代に入ったことを意味している。米国のメディア人、ティム・オライリー氏が発表した論文“What Is Web 2.0”が発端のようだ。同氏の論文を見ると、個人のWebサイト(日本で言うところのホームページ)は1.0、ブログは2.0といった新旧対照表がつけられている。

 Web2.0に関しては、いろいろな意見が交わされており、はっきりとした定義があるわけではない。そうした中、シリコンバレー在住のコンサルタント、梅田望夫氏は『ウェブ進化論』の中で、Web2.0の本質を次のようにまとめている。

・不特定多数の顧客がインターネット上のサービスを利用するだけでなく、新しい技術やサービスの開発に関わるようになる
・インターネット上のサービス提供者は、不特定多数の顧客の力を活用し、新たな価値を創造する
・顧客とサービス提供者の相互作用の結果、Webの世界の価値は自己増殖していく

 Web2.0に属するインターネット・サービスの代表例として語られるオンライン百科事典「Wikipedia」は、顧客とサービス提供者の連携作業の典型例である。Wikipediaはインターネット上に公開されており、誰でも自由に読め、項目を追加でき、解説文を書き換えられる。誤りを見つけたら当然、修正できる。不特定多数の顧客が集まって、Wikipediaを使い込んでいくと、そのつど新しい情報が付加され、間違いが減り、解説文は洗練されていく、というわけだ。

 インターネットの世界に限らず、サービスや商品を提供する側と、顧客との間には、ある種の相互作用が働いており、それをうまく利用できた企業がヒット商品、あるいは価値のあるサービスを提供できた。しかし、それはあくまでも目に見える特定顧客との関係に限られていた。これに対し、Web2.0の世界では、目に見えない顧客、しかもインターネットを利用している膨大な不特定多数を巻き込める。この点が今までとは大きく異なる。

 顧客とサービス提供者が双方向でコミュニケーションするための道具として、インターネットがあり、ブログやWebサービスなど、Web2.0として総称される技術がある。つまりWeb2.0とは、新しいWeb利用のあり方、サービスを提供している企業、それを支える技術、といった異なる要素を総称したものと言える。